未来は人工知能を持った人型ロボットの普及する時代になると予言されて久しいが、その実現の前には、色々な障害が立ちはだかっている。
一つは、能力の限界。人間の頭脳に匹敵する処理能力と処理速度を持ったマイクロプロセッサは、現在に至るまで開発されていない。頭脳だけ良ければロボットが作れるわけではなく、敏速で正確な動きをするメカも必要だ。自然な二足歩行ですら、最近ようやく実現の道が開け始めたばかりである。
もう一つは、責任問題。たとえロボットができたところで、ロボットの誤判断により人や物に与えた損害に対して誰が責任を負うかという問題が残る。最近の自動車の一部にある自動運転アシスト機能も、責任問題から、飽くまでも「運転アシスト」つまり運転手の操作の補助にとどまっている。ロボットについても、アイボみたいなおもちゃのロボットを除き、完全な自律運動ロボットの発売は難しいだろう。まるで鉄人28号みたいに、オペレータの操作が必須になるかもしれない。
これらは以前から言われている問題だが、私の考える問題がもう一つある。それは、「家庭用ロボットバッシング」である。
私はここに予言する。もし将来仮に人型家庭用ロボットが発売され、一部に熱狂的な人気を持って迎えられたとしても、その反面、それを快く思わない勢力は確実に存在するだろう。きっと、こんな題名や記事が新聞や週刊誌等を飾るだろう。
- 人との対話を拒否し、ロボットとのコミュニケーションに耽溺する若者たち
- 「部屋に引きこもり、ロボットは何でも言う事を聞く奴隷」幼女誘拐犯Xの奇怪な日常
- 「女のコがキモいと思う男のこんな行動ワースト10」 第1位、ロボットと会話してる男 第2位、美少女ロボットを持ってる男 第3位、ロボットの世話ばかりしてる男
ロック音楽やアニメやフィギュアやパソコンや携帯電話の次にバッシングのシャワーを浴びるのは、ロボットである。そして、少年犯罪が増えるのも、幼女を狙った性犯罪が増えるのも*1、郵便ポストが赤いのも、全部ロボットのせいにされるだろう。「若者の健全な育成を阻碍する存在」としてロボットは邪魔者扱いされるだろう。
また、人型家庭用ロボットは当初は高価なために企業の宣伝用かマニアのオモチャ扱いだろう。するとやはり、その購入者層にアピールするようなロボットが登場する。そして最初のうちは「人型家庭用ロボット=モテない根暗なオタクが彼女の代わりにしてニヤニヤ笑いながら毎日会話するような美少女コミュニケーションロボット」というステレオタイプがなかなかぬぐい去れないのではないだろうか。
家庭用ロボット時代の黎明期には、ロボットを持っている人間はうらやましがられる代わりに、さんざんバッシングの洗礼を受けるだろうことは、過去の歴史から考えてみても、十分考えられる事である。未来はそんなに甘くないってこった。
とは言え、これほどひどい展開にならない可能性も十分考えられる。それは、テレビ局などマスコミの大口スポンサーにロボット会社が付いた時である。過去あんなにひどかったマスコミのオタクバッシングが下火になったのは、深夜の萌えアニメや「電車男」やメイド喫茶の特集番組など、視聴率や放映料の稼げるオタクビジネスに味をしめたからではないかと思われるが、同じく、ロボット擁護の方が金になるのなら、たとえ世間でロボットバッシングがあったとしても、マスコミの表面に堂々と出る機会はあまり無くなるかもしれない。所詮、そんなものだ。
*1:どちらも厳密には、「見かけ上増えたように見える」とした方が正しい。