支配者の歴史か、人民の歴史か

 中学生の歴史の勉強を少し見てやったら、15年くらい前の知識では教えられないところがあちこちあることに気付かされた。

 何しろ、我々が昔習わなかったような、反乱とか革命とかの名前がポンポン出てくるのだ。最近の歴史教科書は政府への反抗を煽る革命家ばかり賛美しているなどと言われているが、これほどひどいものとは思わなかった。

 「支配者の側から見た歴史でなく、人民の側から見た歴史を」。確かにその視点も大切だ。しかし、人民の歴史とは支配者の歴史の影響が確かにあり、表裏一体であることを忘れてはならない。支配者階級は悪で人民を抑圧するもの、平民層から出た指導者や革命家は正義で圧政からの解放をもたらすもの、と決めつけて誘導するのは、どうも納得がゆかぬ。共産圏の国々の悲劇とは、この考えの元に起こった労働者(プロレタリアート)革命が労働者を解放するどころか、結局は共産党幹部がかつての資本家(ブルジョア)階級のように特権を貪って、人民を抑圧したところにあったのだ。

 とは言え、私は扶桑社の「新しい歴史教科書」は逆の極端のような気もするので支持はしないが。自国に不利な歴史も歴史であり、同じ轍を踏まぬためにも学ばねばならぬからだ。しかし、日本の歴史には良い面もあれば悪い面もあった。悪い面に目をつぶるのが良くないのと同じで、良い面に目をつぶるのも良くないと思う。