- アーティスト: カーペンターズ,トニ・スターン,レオン・ラッセル,ジュース・ニュートン,ポール・ウイリアムズ,ニール・セダカ,ピーター・ユーデル,ジオフ・ステファンズ,ハンク・ウィリアムス,ジョン・ベティス,テリー・スキナー
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 1995/11/10
- メディア: CD
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私がこの歌を知ったのは昭和が終わりかけていたか平成が始まっていたか、とにかく中学2年か3年の頃だったと記憶しています。周囲のクラスメートがビートの利いた最近のロック音楽に夢中なのを尻目に、自分は和洋問わず1960〜70年代くらいのゆる〜い懐メロに夢中だったという、言わば私の中2病時代。
「イエスタデイ・ワンス・モア」という歌の歌詞通り、今回はそんな昔を懐かしむわけですが、初めてこの歌をラジオで聴いた時の衝撃は今でも覚えています。素晴らしいとか萌えとかいうレベルじゃない。シビレた、という言葉が一番近いように思います。「シャラララ、ウォウウォウ」、あのコーラスにガツーン!とシビレてしまったわけです。私がこの歌をラジオで知ったというのも、シャラララ、ウォウウォウというコーラスに夢中だったのも、まさにこの歌の歌詞通り。
思えばこの「イエスタデイ・ワンス・モア」こそが、私がマザーグースみたいな童謡を除く英語の歌に本格的に親しむきっかけとなった、初めての歌でした。
ところが、問題がありました。次に興味を持ったのは、この歌の歌詞はどんな意味なのだろうという事。今だったらCDを買った時の歌詞カードと対訳を真っ先に頼りにするでしょうが、当時家にはCDプレイヤーなんて無かったし金も無かったのでその案はボツ。しかし幸いなことに、この歌は比較的有名なので、いろんな歌集に英語の歌詞が載っていました。それを手書きで写して―ところが、歌集の英語曲は大抵歌詞の間違いがザラにあるもので、二つ三つあった中のどれが正しいのかは当時わかりませんでしたが、それはともかく―あとはそれを日本語に訳すだけ。
出だしは簡単です。"When I was young I'd listen to the radio waitin' for my favorite songs"は複文がどう入り組んでいるのかを解きほぐす事ができれば、あとは意味が比較的簡単にわかります。「何だ、簡単じゃないか」と思って始めたのも束の間、後の方になるにつれてだんだん難しくなっていったのでした。
確かに、歌詞の意味の概略はわかります。若い頃に聴いてた懐かしい音楽を再び聴いて涙するという内容です。しかし、細かい意味となると、わからないところだらけでした。
特に私の頭を悩ませていた問題は、二つありました。
- ただ昔流行っていた失恋の歌を今再び聴いているだけで、単にtearsとかweepという言葉を使わずにcry(泣き叫ぶ、わんわん泣く)という激しい泣き方を表す言葉があえて使われているのは何故か?
- 最後の方のJust like before It's yesterday once moreの訳し方で、just like beforeとはどの文にかかっているのか、itは何を表しているのか?
いろいろ考えてみたり、後に英語の先生に聞いてみることもありましたが、どうしても納得のいく結論が出ませんでした。後にCDの歌詞カードや書籍に載っている対訳も見たのですが、ただ単に「泣けてくる」「まるで以前のよう 昔の日々が再びやってきたのよ」という具合に淡々と訳しているだけで、私の疑問を完全に解決するものとはなりませんでした。
あれから20年近くの時を経て、ようやく私なりのファイナル・アンサーが出たのが今日の事。書店でビジネス英語の本を探している最中に、この一冊をたまたま目にしたのでした。
- 作者: 土屋唯之
- 出版社/メーカー: 南雲堂
- 発売日: 2002/09/01
- メディア: 単行本
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私が一番興味深かったのが、Just like before It's yesterday once moreとは、二重の意味どころか5つくらいの意味に解釈できるという事。その一つとして、この歌詞の「私」は昨日失恋したのではないか、という解釈ができるという事には私も全く気付きませんでした。この解釈に従うなら、「昔失恋したあの時と同じように、私が再び失恋したのはつい昨日のこと」という意味となります。つまり、失恋の翌日に、昔聴いていた失恋の歌と自分の失恋の思い出を、ちょうどあの頃と同じ歌を聴くことで思い出した、というわけです。これなら、ただ涙するだけにとどまらず、わんわん泣くのも納得いきます。
他にも、この歌にはtheyとかitなどの代名詞が本当にいっぱい出てきます。それらがどの言葉や文にかかっているのかの意味を探っていったり、シャラララ、ウォウウォウを含む歌とはどの歌を念頭に置いていたのかとか、当初含まれていたが後に削除された幻のフレーズ*1など、他にも内容は盛りだくさん。
もっとも、この本の解釈は飽くまでも著者の取材と推測に基づく一つの説に過ぎない事、そしてこの本では「文法的に正しい解釈=正しい解釈」というのを一つのものさしとして使っていますが、歌の歌詞なんてものは通常の文章と違って詩的表現や口語表現やスラングのためにあえて通常の文法から外れている*2事がしばしばあり、文法的正しさは飽くまでも一つの目安に過ぎない事などには注意しなければなりません。
しかしそれを差し引いたとしても、この歌が大好きな方や英語の歌詞の英訳に興味のある方なら、とにかく興味深くて参考になる内容ばかりなので、是非ともおすすめします。