テレビアニメのサザエさんはサザエさんか

 私は最近、日曜日の午後六時半にはフジテレビを敬遠している。そう、サザエさんがつまらないのだ。はっきり言おう、今のテレビアニメのサザエさん一番面白いのは、エンディングで流れる漫画だ(これだけが原作に基づくネタだから)。

 大体、サザエさんを、何も毒っけのない、ほのぼのファミリー漫画だと考えるのが大間違いだ。断じて違う。もともと、サザエさんはドタバタ喜劇だ。パンチの利いたギャグを楽しむ漫画だ。サザエたちのドジや、カツオの巧妙ないたずらテクニックに転げ回りながら大笑いするのが正しい楽しみ方だ。そして、奥底に隠れている、「いじわるばあさん」的なエスプリこそ、長谷川町子漫画のギャグの真髄であると私は思っている。


 最近のテレビアニメ版は、どうも原作から大きくかけ離れている気がして仕方ない。はっきり言って、キャラクターだけ借りたパロディものも同然である。今のサザエは運動不足過ぎやしないか。たとえ「お魚くわえたどら猫」がいても、眉をつり上げて真剣に裸足で追いかけるどころか、まるで瀋陽の日本総領事館員みたいにポケーッと突っ立ちながら生気のない声で「こらー待ちなさい!」と言うようなサザエは、もはやサザエではない。もちろんここまで極端ではないけれど、今のサザエは、じきにこうなっても違和感を感じないくらい、まったりし過ぎている。

 初期のテレビ漫画のサザエさんは、まだ原作の雰囲気に近いものだった。何しろ、キャラクターがよく動き回る。タラちゃんは嘘泣きっぽく泣いているのではなくて、本当に泣いているのだということを体全体を使って表現している。波平はカツオが何か悪さするとゲンコで殴る、古き良きカミナリ親父だ。今の作品に慣れている人には、少しブラックな感じでかえって気味悪いように思えるかもしれないが、これこそ本来の姿だ。昔のサザエさんの方が、本当に動作が生き生きとしていた。今のは活気も何もあったものではない。


 本物のサザエさん、本当に面白くて笑えるサザエさんを鑑賞したいなら、漫画で読むべきだ。最近のアニメ版を面白くないと思って敬遠している人には、きっと新しい発見だろう。大体、漫画のサザエさんが今のアニメみたいなほのぼのまったりファミリー漫画だったとしたら、東京サザエさん学会も「磯野家の謎」でサザエさん一家にヒロポン中毒の濡れ衣を着せるわけがない。

 また、アニメ版も、かつて火曜日にあったような旧作再放送をまた是非とも再開して欲しいものだ。サザエさんちに内風呂がなかった時代や、サザエさんちのお隣さんが伊佐坂さんでなく浜さんで、カツオがいたずら盛りで年中サザエに追い回されていた時代こそ、アニメ版サザエさんの良き時代だった。