漫画を大人の手にも取り戻そう

 漫画は、「子供のためのもの」とか「子供っぽい娯楽」というイメージで語られる事も多い。漫画を読む大人が非難される理由の多くは、「そんな子供っぽい娯楽にうつつを抜かして、世間に肩身の狭くなるような事は、後生だから止めてください」というものである。
 しかし私はあえて言おう、歴史をひもとくなら、漫画は元々大人のためのものとして生まれた、と。
 大体、漫画を子供っぽいと非難する人でさえも、サザエさんの漫画やアニメに限っては、なぜか喜んで見たりするものだ。


 日本の漫画の歴史としてよく引き合いに出されるのが「鳥獣戯画」や「北斎漫画」だが、これらを漫画の起源とするのには賛否両論あるだろう。しかしこれらを除外し、明治以降に限定するとしても、事の起こりはやはり大人向けの漫画の一種である、政治風刺等を題材にした「ポンチ」だろう。現代の新聞にも政治面に時々載っている、一コマ漫画のことである。
 その後、新聞の一コマ漫画はコマ数が増えて、今私たちが新聞で毎日見ているような、あの四コマ漫画みたいなものが登場した。後にそこから、「のらくろ」みたいな子供向け漫画が派生していった、といった具合である。
 外国でもおおよそ似たようなもので、ポンチ→複数コマの新聞連載漫画→子供向け漫画の順に登場している。蛇足ながら付け加えると、スヌーピーでおなじみの「ピーナッツ」という新聞連載漫画は、チャーリーたち子供のキャラクターを借りて大人社会を風刺した、れっきとした大人向け新聞漫画である。


 このような歴史を考えるなら、「漫画」と聞くだけで「漫画なんてどれも、どうせ子供っぽくて下らない読み物に決まっている」「そんな趣味は子供のうちに卒業すべきだ」とハナから決め付ける態度は、いかがなものかと思う。漫画は必ずしも子供っぽい娯楽とは限らない。子供向け漫画や安っぽい内容の漫画だけでなく、大人を対象にした漫画や大人の鑑賞に堪える秀作も実際には多いものである。漫画を大人の手にも取り戻そう。*1


 私は小学生の頃、新聞漫画みたいなタッチの漫画を描けるようになりたいと思って、毎日新聞の「アサッテ君」をお手本に少し練習した事があるが、結局あまり上達しなかった覚えがある。今からでも練習してみようか。

*1:もちろんこれは、子供向け漫画がいけないという意味でも、いかがわしい成人漫画のことを言っているわけでもない。誤解する人はいないと思うが、念のため。