PSEマーク無しでも外国人観光客になら売れる?

http://www.01.246.ne.jp/~tsutsumi/pse/

外国旅行者や外国人観光客用に販売する電気製品は、表示を付さないで販売することができます。
 外国旅行者や外国人観光客のみやげ用モデル(ツーリスト・モデル)等で、外国で使用することを前提に国内で販売する電気用品は、経済産業大臣の承認を受けた後、表示を付さずに販売することができます。
 ただし、承認に当たっては以下のような条件が付されます。販売事業者も措置を講ずることとなっていますので、注意してください。
<承認に当たって付される条件>
1.製品には、包装の表面等容易に認識し得る箇所に、外国旅行者や外国人観光客を対象としたみやげ品等であり、日本国内での使用を前提に製造されたものではない旨の表示をすること。
2.販売するに当たり、外国旅行者や外国人観光客を対象とした製品であって、日本国内での使用を前提に製造されたものでない旨を、消費者が確実に知り得るよう適切な措置を講じることを、販売店等に依頼すること。


「電気用品を販売される事業者の皆様へ」(経済産業省商務情報政策局製品安全課)


 経済産業省発行のパンフレットによると、PSEマーク無しの電化製品であっても、外国人観光客が海外で使うためのものであるならば、日本国内での販売が許可される例があるという。
 もっともこれには経済産業省の承認が必要らしく、認められるか否かは役人の気分次第であるが、もしかしたら、このままだと“ポア”されてしまう運命にある中古のヴィンテージオーディオやレトロゲーム機も、海外で生き延びる可能性があるかもしれない。


 もしこれが実現するなら、秋葉原に行っても日本人が買えないヴィンテージ商品に、外国人観光客は喜んで飛び付くだろう。中古の真空管アンプ真空管ラジオやオープンリールデッキやレコードプレイヤーや8ミリ映写機などなど。これら、技術立国日本の生きた証人である品々が、ゴミの山ではなく、外国人コレクターたちに引き続き愛されて生き延びてくれるとしたら、こんなにうれしい事は無い。


 しかしこんな、優秀な日本の電気製品の中古を日本人が買えなくなるという事自体、経済産業省が愚かにも犯した日本の恥、外国人の物笑いの種とも言えよう。
 私も以前から噂には聞いていたが、まさか、電気製品安全法に中古も含まれるというトンチンカンな解釈をこさえるなんて、漫画じゃあるまいしと私もずっと疑っていた。しかしそれが、2月になってウェブサイト上で「中古も含む」と明記するようになって、自分の目を疑ったものだ。四月馬鹿の冗談ではなくて、まさか本当にやっちゃうなんて、正気の沙汰ではない。
 この曲解は、電気製品の安全を守るという法の意図をねじ曲げた拡大解釈である。まるで、「蚋(ぶよ)を漉(こ)し出(いだ)して駱駝(らくだ)を呑む」*1とキリストの非難した、かのパリサイ人さながらである。
 それから、この解釈は、旧電気製品取締法の▽〒マーク・○〒マークの権威や、そのマークにお墨付きを与えた政府の権威を否定したも同然、「20世紀の電気製品は販売禁止にしなければいけないほど危険だった」と言っているも同然である。馬鹿にするのもいい加減にして欲しい。嘘も休み休み言えというものだ。
 できる事なら、日本の古き良き電気製品が廃棄処分になったり海外に流出するのではなく、日本国内で長く愛されて欲しいものである。テレビ局やラジオ局が昔の8ミリ映画やオープンリールテープを再生するために*2海外で日本製の中古を探すなんて、まるで漫画みたいな話ではないか。
 しかし、それが叶わないとしたら、外国に“亡命”してでも生き続けて欲しい。PSEマークが付いていようがいまいが、外国人は日本の電気製品の価値をよく知っている。

*1:蚋も駱駝も穢れた動物としてユダヤ人は食べない。一杯の水や葡萄酒に入った一匹の蚋を必死になって取るかのように、戒律の些細な点は馬鹿に几帳面に守るのに、もっと重要な、法の背後にある精神というものを忘れている事を皮肉った喩え。聖書のマタイ傳二十三章二十三節。

*2:それくらいならともかく、Uマチックのビデオデッキ並みにマイナーなメディアは絶望的になるだろう。