今でも現役、歴史的仮名遣による文学

歴史的仮名遣は古文専用、または文語体専用の時代遅れの表記」と誤解したり、「現代の文学は現代仮名遣いで書くべきだ」と主張する人は国語学者の中にさへ、少なからず居ます。
しかし実際には、歴史的仮名遣は今でも死んでゐません。「現代の言葉」としての歴史的仮名遣による文学作品が、細々とではありますが、生み出されてゐます。俳句や短歌についてはご存知の方も多いでせうが、それ以外の詩歌等も今なほ綴られてゐます。

最初にお断りしますが、歴史的仮名遣を「現代の言葉」として使用する人のすべてが「反現代仮名遣い」とか「歴史的仮名遣こそ正統表記である」と云ふ立場であるとは限りません。単に表現技法として気に入つてゐるだけだつたり、戦前の文豪のリスペクトだつたりと、動機は人それぞれです。以下に紹介する作者の歴史的仮名遣に関する立場と、私の主催する同人誌「みんなのかなづかひ」のそれとを混同する目的はありませんし、恐らく違ふと思ひますので、念のため書いておきます。

小津夜景「フラワーズ・カンフー」(発行:ふらんす堂

先日、明大駅前の古本屋(新品の文芸同人誌もあつた)「七月堂」で偶然見掛けました。ウィキペディア情報によると、フランス在住の俳人らしいです。
歴史的仮名遣だからといつて古めかしい文体なのではなく、現代語の表現を取り入れたり、内容も現代的で新鮮です。
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fragie.exblog.jp

生き事 13号(発行:生き事書店)

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先ほどの本の隣にあつたのが、この同人誌でした。久谷雉さんの詩は、現代仮名遣いのものだけでなく、歴史的仮名遣の口語文によるものもありました。現代的な感性の文体で、作品によつてはエロスの世界を綴つてゐたりします。