正字組版支援ソフト「正字君」製作中!

 正字正かなでの組版で苦労する事の一つが、「示偏や之繞の字形をはじめ、Shift-JISやUnicodeでは略字体の字形になつてゐる漢字を正字に直して印刷する事」です。Adobe-Japan1-4またはそれ以上に対応したOpenTypeフォントと、フォントの異体字切替に対応した組版ソフトやワープロソフト(Adobe InDesign、EDICOLOR、TeX一太郎)があれば可能なのですが、これらのソフトには残念ながら全ての新字→正字の組合せをボタン一つで一括変換する機能は付いてゐません。
 過去に二号まで発行した「正かなづかひ 理論と實踐」で、私もAdobe InDesignを用ゐて正字正かなでの組版に挑戦したのですが、漢字を一つ一つ手作業で直すのは大変時間が掛かる上、実際には直し切れてゐない漢字もあちこち有つて重版で直したりと、この作業をどうにか改善する事が大きな課題となつてきました。

皆が自由に使へるソフトが有ればいいな

 この作業を支援するソフトは、過去に無かつた訣ではありません。たとへば、旧仮名・旧字変換支援 misimaといふソフトがあつたやうですが、現在一般公開はしてゐないやうですし、作者は「戦前の著者が旧字旧かなを使用するのは自然だが、現代人がインターネットの掲示板で旧字旧かなを使用するのは気持ち悪い」といふ趣旨の発言をしてゐます。この作者の考へからか、「新字新かなでの入力」は対応してゐても、「旧字旧かなでの入力」には対応してゐないやうなので、たとへ現在も一般公開されてゐたところで、「Shift-JISやUnicodeの範囲での正字と正かなで書かれたテキストファイルを完全な字体に仕上げる」といふ、私たち正かなクラスタの求めてゐる機能は完全に満たしてゐませんし、正かなクラスタがこんな意見を持つ作者の開発したソフトを使用して正かな同人誌を作つたとなると、作者も良い顔をしないでせう。
 私たちの手で正字組版支援ソフトを作成したい。そして私の希望としては、正かなクラスタだけでなく、戦前の書籍の覆刻など、様々な立場の人が様々な用途に自由に使へるやう、プログラムソースも変換辞書も全てオープンにしたフリーソフトとして公開したい。これが私が正かな同人誌のプロジェクトを始めてからの夢でした。

こんなソフトです

 ソフトの名前は「正字君」。「Shift-JISの範囲での正字(または新字)と正かなで書かれたテキストファイルを貼り付けて変換ボタンを押すと、InDesignやEDICOLORのタグ付きテキストファイル、またはTeXの記法に変換する」といふだけのシンプルなプログラムです。

 変換したファイルをメモ帳等を使用してテキストファイルに保存し、対応するソフトで取り込みます。

 このソフトの試作版は下記のページで公開してゐます。
http://apps.osito.jp/seiji/
 ソース表示すると一目瞭然なのですが、このプログラムはJavaScriptを使用してゐるので、ローカルに保存して変換辞書を改造する事も可能です。
 変換辞書はまだまだテスト中です。現在わかつてゐる問題として、EDICOLORで「〓」に変換されてしまふ漢字も一部にある(原因は把握済)のでこれから直す予定です。また、正かな同人誌の組版でテスト運用しながら変換辞書もチューンナップしていく予定です。

補足・EDICOLORの値下げにはビックリ!

キヤノンITソリューションズ:エディカラー
 一部の新聞社でも実際に組版作業で使用されてゐるといふプロ向けソフト、EDICOLOR。過去のバージョンは10万円位したと記憶してゐるのですが、最近30,000円と大幅に値下げ、しかも9/30まではキャンペーンとして18,000円で入手出来るとのこと。OpenTypeフォント異体字切替対応で、Adobe-Japan1-4に対応した「I-OTF新聞明朝新がなPro R」「I-OTF新聞ゴシック新がなPro M」も附属してゐるので、正字での組版もすぐ可能です。正字正かなでの出版物の作成を検討していらつしやる方は、是非このソフトも選択肢に加へてみてください。