正かな同人誌裏話 (1)どうして「旧かな」オンリー同人誌なんて作ったの?


 今年11/3に文学フリマで初売りした「正かなづかひ 理論と實踐(じっせん)」は、現代ではすつかり珍しくなつた、全ページ歴史的仮名遣の文芸同人誌です。
(通販もはなごよみにて受付中。今年の冬コミでも頒布します)
 それにしても、どうして歴史的仮名遣オンリー同人誌なんて作つたのだらうと、お思ひの方も多いのではないかと思ひます。

 皆さんはご存知でせうか、インターネットには、歴史的仮名遣を「今は使はない昔の表記」としてではなく、「現代の言葉を書き表す生きた表記」としてブログやTwitter等で日常的に愛用してゐる人がゐる事を。
 ちなみに彼らは「正かなクラスタ」と呼ばれてゐます(「正かな」とは「正かなづかひ=歴史的仮名遣」のこと)。
 私は普段はいはゆる現代仮名遣を使ふ事が多かつたものの、歴史的仮名遣も場合によつて使ふ事があります。
 Twitter歴史的仮名遣愛用者を何人かフォローしてゐましたし、そんな人との間に限つては、歴史的仮名遣でやりとりしてゐました。

 時は2011年8月2日。私はTwitterで、@shoshokakiさんのこんなツイートを目にしました。

漢字の同人誌出せよ

http://twitter.com/shoshokaki/status/98350371369517057
 この方は書道や漢字の字体にかなり詳しい方でした。後に同人誌の題字を書いてくださる事にならうとは、この時にはまさか思ひもしませんでしたが……。
 それに対して私(@osito_kuma)が

11/3の文フリ合せで正字正かな同人誌を作るのも良ささうですね!

http://twitter.com/osito_kuma/status/98367719505805312
と思ひつきで返事すると、あれよあれよと云ふ間に賛同者が増えて仕舞ひ、その後は募集もしてないうちから原稿が次々届く程。反響の大きさにビックリしました。

 また、歴史的仮名遣関係で一番有名なサイト、言葉言葉言葉の運営者である野嵜氏も監修者として加はつてくださり、心強い協力者を得たこのプロジェクトは、「有つたら良いな」で終る想像上の本ではなく、実際の文芸同人誌を作るプロジェクト、通称「正かな同人誌」プロジェクトとして、本当に軌道に乗り始めるのでした。

 歴史的仮名遣は決して古びた表記ではなく、捨てるには惜しいし現代でも十分通用するものだぞ、と云ふ主張を込めて、冬コミサークルカットに載せたスローガンが「歴史的かなづかひは生きてゐる!」。
 ところで、おもちくん達*1や、みよちゃん*2が持つてるプラカードは、右横書き(右から左に書く横書き)で「温故知新」。実は「正かなづかひ 理論と實踐」創刊号は、横書き部分はみんな左横書き(左から右に書く横書き)で、右横書き(右から左に書く横書き)が使はれたのは、今のところここだけ。レアです。
 次回は、「正かな同人誌裏話 (2)どうして横書きを右から左に書かないの?」の予定です。

*1:野嵜さん作のキャラクタ。右から「にゃもちくん」「こもちくん」「おもちくん」

*2:拙作のキャラクタ。昭和10年代の小学生。着物姿多めでレトロ担当