大阪ひとり旅(番外篇) 最初で最後の「寝台急行銀河」

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の続きです。


 話は旅の初日に戻ります。新幹線で新大阪駅に着くと、みどりの窓口で早速帰りの切符を買っていました。

 約16,000円也。行きの新幹線のぞみよりも、ずっと高いです。切符が手に入らなかったらどうしようと少し心配はしていましたが、ちゃんと取れました。*1

 さて、切符に書かれた日時がやって来ました。寝台急行銀河での、大阪から東京への旅の始まりです。


 閑散としたホームで待つこと二、三十分。ようやく、昔懐かしい電気機関車が姿を現し始めました。その機関車に牽引されてやって来たのは、待ちに待った寝台列車です。

 列車に乗り込むと、車内には二段ベッドがずらりと並んでいました。座席と寝台の兼用ではなくて寝台専用に設計されているので、予想していたよりもしっかりした作りでした。仮眠どころか、十分眠れそうです。


 私は上の段。上の段の向かいは空いているみたいですが、後から誰か乗ってきた時の事を考えて、荷物を置くのはやめにしておきます。
 下の段は中年の夫婦でした。「もうすぐ急行銀河が廃止されるという話を聞いたので、大阪からの帰りに乗ってみることにした」と話してみましたが、二人ともその事を知らないようでした。その夫婦が若い時分は当たり前のように存在して、当たり前のようにみんな利用し続けてきた寝台急行銀河。それがもうじき、無くなろうとしています。
 上の段に登ると、荷物の整理と着替えを。寝巻が用意されていたのは意外でした。とにかく、早めに眠ることにします。……と思いきや、一つの事に気付きました。この列車には、貴重品を安全にしまえる場所はありません。個室ではないし、鍵のかかるロッカーもありません。腹巻でも持ってきていたらそこにしまえるのですが、仕方有りません。ゴマノハエが来ない事を祈ることにしましょう。快速並の速度で走る列車の音を感じつつ、11時過ぎには眠ることにしました。車内アナウンスも、東京に着くまでおあずけです。


 夜中、何やらざわざわとした物音に目を覚ますと、列車が停止していました。外をのぞくと、どこかの途中の駅に着いているようです。普段なら車内アナウンスがあるので駅に着いた事がわかるところを、それがないので、外を見ない限りは、駅に着いた事すら気付きません。
 その後はほぼ熟睡状態。目を覚ますと朝の5時頃でした。まだ外は暗いです。


 廊下の腰掛に坐って外の景色を眺めてみると、知らないうちにもう、静岡県から神奈川県に入るあたりにまで来ていました。行きの新幹線とは全く違って、速度もゆっくり、レールの継ぎ目のガタゴト音が聞こえて、踏切の警報音が時々聞こえるのが、「大阪から東京への長い距離を、新幹線ではなくて在来線を使ってゆっくり走っている」という何とも不思議な感覚にさせてくれます。
 夜が明けてくると共に、少しずつ人々が起き出して、朝の支度をしたり、洗面所へ行ったりし始めました。例の下の段の夫婦によると、鉄道マニアらしき人を結構見かけたとのこと。
 列車はゆっくりと、しかし確実に東京に向けて走り続けています。「おはようございます」の挨拶と共に、車内アナウンスも再開されました。これまで何度も急行銀河の車両を見かけた品川車庫の脇を過ぎると、とうとうこの列車の目的地である東京駅に到着です。


 東京に到着した列車は、まだ機関車のモーターの音を響かせながら、しばらくそこにとどまっていました。今度こそは外も明るいので、ゆっくり観察したり写真を撮ったりできます。十分近くはホームにいたでしょうか。その後、発車の合図と共に走り去っていきました。


 個室寝台ではなく、8時間くらいかかる上に新幹線より高い*2ために、あまり利用されなくなってしまい、ついに廃止されてしまった急行銀河。以前から山手線で品川車庫の脇を通るたびにずっと気になっていたので、廃止が決まる前から是非とも乗ってみたいと思っていましたが、幸いその願いを果たす事ができました。もう乗ることができなくなってしまったのは非常に残念でしたが、良い思い出をありがとう。

おまけ

なお、「はてなフォトライフ」にはもっとたくさんの画像がありますのでご覧ください。
寝台急行銀河 - osito's fotolife

*1:なお、A寝台も取ろうと思えば取れましたが、少々予算オーバーしてしまうのでB寝台にしました。

*2:ただし、ホテル代+電車代と考えるとべらぼうに高いわけではないかもしれませんが。