ヨーカドー蘇我店で男物パンツを買え!

おはよう、フェルプス君。今回の任務は
イトーヨーカドー蘇我店で男物パンツを買え!
である。
 最初は恥ずかしいだろうが,それは敵の陰謀だということを肝に銘じてくれ。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ或いは社会的に抹殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。成功を祈る。
 なお、このテープは自動的に消滅する。

 何のこっちゃと頭を抱えてる人もいるかもしれない。私のような男なら男物パンツを買うなんて別に恥ずかしいことではないし、たとえ女であっても旦那のを買うなんてよくあることである。とにかく私は、閉店間際のイトーヨーカドー蘇我店に行って、ワゴンに並んでいた男物パンツを二袋ばかりつかむと、レジはどこにあるか周囲を見回した。

 店内には、もうすぐ閉店するとの放送が流れ始めている。私は焦りながらレジを探し、そして、そこから唯一見える、一番近いレジへ急いだ。

 私がレジへ向かっている最中、大変な事に気付いた。そのレジは、何と、女物肌着売場のド真ん中に位置していたのだ。白か黒か灰色かといった無彩色の男物肌着売場とはまるで別世界の、ベージュ色やらピンク色やらカラフルなナイロンの林を早足でくぐり抜けると、そこにはレジがあった……のだが、なお困ったことに、そこには先客が。片方のレジには白いブラを精算してる奥様らしき人、もう片方にはラクダ色のヅロースらしきもの(じっくり観察して変態と間違われても困るので、よく見てない。うろ覚え)を精算しようとしてる奥様らしき人。こりゃ参った。

 どちらの後ろに並ぼうか、それともこの“魔境”を避けて別のレジを探そうかと迷っていた矢先、後者のレジの担当の男性が私を手招きした。有り難い助け船。地獄で仏とはこの事か。そしてラクダ色の肌着を持った奥様を待たせて、私のパンツを先に精算してくれた。すまん、前に並んでた奥さん、申し訳ない。割り込みになってしまったけれど、事情が事情だけに、今回だけは許してくれ。そして私は、この任務が完了するや否や、この“ダンジョン”を脱兎のごとく走り去って脱出した。

 全く、「男は一人で男物肌着など買いに来るな、奥さんにでも買わせろ」と言わんばかりのレジ配置である。とは言え、私はこの店そのものに悪い感情は特にないので、フォローしておく。レジ配置そのものは改善の余地があるけれども、店員の対応には好感が持てた。今回の事件に懲りず、また今度もヨーカドー蘇我店に来る事にしよう。まあ、焦らずもっと冷静に探せば、紳士服売場辺りにも、もっと遠いだろうけど安心して並べるレジがあったかもしれない。今度行く時にはちゃんと確認しておくことにしよう。

 他に気付いた事として、こういう店ではおじいちゃんがはくようなラクダ色のサルマタが今でも現役で売られていたのには驚いたし(やっぱり今でも細々と需要があるのだろう。さすがにフンドシは無かったが)、男物のパンツと言っても高い物も結構ある。たとえば、グンゼというと、かつてはそれこそ安くてオーソドックスな(悪く言えばダサい)肌着の代名詞的存在だったが、知らなかった。あのグンゼの白ブリーフでさえ、全体からすれば特別安物というわけでない事を。私が普段ドンキで買ってる安物パンツの二、三倍もの値段はする。そしてそのグンゼも、最近は高級志向のブランドを立ち上げて売り出している。ワコールも男物高級肌着の世界に進出し始めているようだ。高いけど、それだけ快適そうだ。こういうのを見ると、私がたとえ外面には気を付けたところで、自分の着ている肌着となると、いかに鈍感だったかを思い知らされる。男にはそういう人の方が多いものかもしれないけど、時には目を配る必要があるだろうか。

(2005/11/06補足:後にまた同じ店に行って調べてみたところ、実際には、男性肌着売場からそう遠くない位置にレジが隠れていたのを発見した。そう、「隠れて」いた。男性肌着売場の隣の紳士服売場の、試着室の裏側に位置していて、男性肌着売場からは試着室に遮られて全く見えなかったのである。これはよく探さないと見つけるのは無理だ……)