“山田孝之や伊藤淳史だから許せる”らしい「電車男」

 前回も書いたが、今、「電車男」の映画やドラマが大人気であり、昨日まで「おたく?アキバ系?キモい、近寄るな、変態」と悪態を付いていたフツーの女の子たちが、今日はアキバ系とセレブのラブストーリーに夢中である。「最初の方はちょっとキモいけど、面白い」と言いながら見ている。

 「電車男」をネットあるいは書籍で知った人は、ストーリーの面白さに惹かれて興味を持っただろう。しかし映画やテレビから入った人は、私の観察している限り、どうやら、中谷美紀山田孝之伊東美咲伊藤淳史といった有名タレントが出演している事がきっかけで見るようになった人が多いように思う。普段はイケメン俳優で人気のある山田孝之だからこそ、宅八郎風の外見に変身して異色な役を演じても人気が出たのであり、これをもし宅八郎が演じたところで、これほど人気は出なかっただろう。もちろん伊藤淳史についても同じ事が言える。所詮、おたく用語で言う所の「ストーリーよりも(三次元)キャラ萌え第一」、つまりキャラの人気で持っているようなものである。

 単純にアニメマニアだというだけで危険人物扱いされたり、コミックマーケットの参加者を「十万人の宮崎勤」と呼ばわったテレビレポーターまで出現した平成初期の暗黒時代は過ぎ去りつつある。今は、「変わり者だけど根は素直で優しく、教われば普通の恋愛もできる」、以前よりましなおたく像も描かれるようになる、だいぶましな時代になってきた。とは言え、「電車男」ブームを、即、「おたくが社会に認められた」と思うのは早計であろう。「秋葉原日本橋有明にいる本物のおたくの存在は許せないが、山田孝之伊藤淳史だから許せる」という人々が、今の「電車男」の映画やドラマのブームを引っ張っているのだから。つまりどうやら、映画やドラマの虚構の世界は好きだけど現実の世界は嫌い、ということらしい……