“大麻は天然薬物だから安全”?

 はっきり言おう。一部の大麻解禁論者の主張している“大麻は天然薬物だから合成薬物と違って安全”というのは詭弁である。


 そもそも、合成だから害があって天然なら安全だというのは偏見であり、大きな誤解である。誰も天然だからといってフグ毒やトリカブトを好んで摂取しようという気にはならないだろう。たとえ天然であっても、人体に害を与える物質は結構多く、天然だからといって必ずしも安全とは言えないのである。いちばんわかりやすい例でいうなら、阿片は芥子(ケシ)から作られる天然麻薬だが、阿片の誤用が有害極まりないことは昔からよく知られている。

 大体、この種の主張をしている人は、天然の植物から作られたアルコールや煙草の害は認めるくせに、同じ天然の植物から作られた大麻の害は前述のような言い訳をして認めようとしないのだ。ここからして矛盾している。


 確かに薬物は医療目的においては人間の役に立つ。しかし、薬物は用い方を誤ると大変危険な諸刃の剣であり、特に自分の精神をもてあそぶ玩具として誤用するのは危険なことである。医師が医療目的で麻薬成分を含む医薬品を処方する時には、薄められた必要最小限量を短い期間だけ服用するので、比較的御しやすい。しかし、トリップできるほど大量に摂取したり長期にわたって服用するなど、自己流で危険な用い方をするならば、もはや自分では御することのできない暴れ馬となって自分に襲いかかってくることになりかねない。言うまでもないことだが、麻薬・大麻覚醒剤の所持や使用は法律によって厳しく制限されているので遵守すべきである。


(2006/02/04追加:初出時タイトルは「“大麻は天然麻薬だから安全”?」というものだったが、大麻依存者共は「大麻は麻薬ではない」と主張するのが常なので、訂正した。これは、「大麻は安全だ」とアピールしたいのと、法律上は大麻麻薬及び向精神薬取締法の規制から外れている(代わりに大麻取締法によって規制されている)事が根拠だと思われる。それに、「麻薬」とは本来「痲藥」と書かれたが、当用漢字表に「痲」(しびれるの意)の字が無い為、似た字である「麻」を宛てたという歴史があり、「麻薬の『麻』は大麻の『麻』だ」という考えも間違いのようである。しかし、だからといって大麻は安全だという考えに結び付けるのは、論理の飛躍である。ヒロポンは狭義の「麻薬」でなくとも危険なのと同じで、大麻も「麻薬」と呼ばれようが呼ばれまいが、危険があることに変わりはない。改めて釘をさしておく。)