ICカード 対応機器なきゃ 只の板

ICカード公衆電話の見直しについて 〜ICカード公衆電話の磁気カード公衆電話への一本化〜

 今から十年前、磁気テレホンカードは若者の必需品であった。当時非常に流行っていたポケベルを呼び出すためである。

 その陰で、使用済テレカの穴をふさいで磁気情報を不正に書き込んだ変造テレカも広く出回っていた。東京のとある場所に行くと、外国人のテレカ売りが50度数の変造テレカを10枚1,000円で売っていて、一部のポケベルのヘビーユーザの間で大変流行っていた。変造テレカを仕入れてきてはポケベルを打つのに使ったり、仲間に売ったりしている人を時々見かけることがあった。当時の私はというと、金がなくたって変造テレカを使うほど落ちぶれちゃいないさと、そんなのは一切買ったり使ったりしたことがないが、まあ彼らは今でたとえるならファイル交換ソフトで違法ファイル交換をするのと同じくらいの気軽さでその不正行為を行っていたことは確かである。

 ICテレホンカードは、その変造テレカ対策として登場した。しかし私は結局そのICカードを使った事がない。ICカード対応の公衆電話が普及する前にPHSに乗り換えてしまったからである。それは他の大勢の人もそうであり、かつてポケベルを使っていた人々もどんどんPHSや、後に携帯に乗り換えてしまった。そして公衆電話自体もどんどん数が減ってしまった。

 結局、ICテレホンカードは携帯電話というライバルに負けて、さほど普及せずに消えてしまうことになり、旧来の磁気カードが残るという、磁気カードからICカードに移行するトレンドに逆行する奇妙な結果になってしまったが、それほど公衆電話が使われなくなってしまったと言える。せっかくのインテリジェントなICカードも、対応機器がなれれば只の板に過ぎないということだろう。JR東日本は磁気式イオカードを廃止しICカード式のSUICAに切り替えるが、それは自動改札のICカード対応化があってこその話である。銀行のキャッシュカードもクレジットカードも、ICカードになればスキミングによる複製カードが作られる被害を防ぎやすくなるだろうけど、その対策はなかなか進まない。全国の銀行のATMをICカード式に交換していくのは大変なことだろうし、クレジットカード加盟店のCAT端末をICカード対応に切り替えていくのは、なおさら大変なことである。やはり、磁気カードからICカードへの移行というのは、思ったほど容易なことではないようである。