「正字正かな(旧字旧かな)についてのアンケート」結果発表

 2018年11月24日~12月10日まで、インターネットで「正字正かな(旧字旧かな)についてのアンケート」を実施しました。インターネット上、それも私を知る人が多めであるので「偏りなく集められたサンプル」ではなく、飽くまでも「参考程度」ですが、興味深い結果が出たのでご紹介します。ご回答くださった皆さん、どうも有難うございました。

あなたは正漢字(旧漢字)で文章を書きますか。

27 件の回答

毎日 6 22.2%
時々 5 18.5%
たまに 4 14.8%
ほとんど書かない 12 44.4%

あなたは歴史的仮名遣で文章を書きますか。

27 件の回答

毎日 11 40.7%
時々 6 22.2%
たまに 4 14.8%
ほとんど書かない 6 22.2%

※ネットでは同じ歴史的仮名遣で書く人でも、「新字旧かな」で書く人も多いのかもしれません。

正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣で文章をお書きの方に質問です。正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣で書くのは、どんな内容ですか。(複数回答可)

22 件の回答

昔の文章の引用 9 40.90%
人名等の固有名詞 8 36.40%
俳句や短歌 7 31.80%
歌詞 3 13.60%
4 18.20%
詩歌以外の文芸作品 8 36.40%
レトロ風の看板、パッケージ、ポスター等のデザイン 3 13.60%
技術文書 2 9.10%
ウェブサイトやブログ 8 36.40%
SNSへの投稿 18 81.80%
電子メール 6 27.30%
社内文書 0 0%
紙の手紙 4 18.20%
メモ 2 9.10%
私的な覺書の類 1 4.50%
書道練習(文芸作品に限らない) 1 4.50%
手帳、メモ 1 4.50%
Skypeみたいなメッセージアプリ 1 4.50%

※「SNSへの投稿」が断然多いのは、恐らくtwitterでアンケートの宣伝をしたからです。ともあれ、現代はネットが正字正かな実践の一番大きな場になった印象があります。

正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣で文章をお書きの方に質問です。漢字や仮名遣はどう確認しますか。(複数回答可)

20 件の回答

戦前の国語辞典や漢字字典 5 25%
戦後の国語辞典や漢字字典(紙の書籍) 11 55%
電子辞書 6 30%
インターネットの辞書サイト 13 65%
戦前の国語便覧 0 0%
戦後の国語便覧 2 10%
他人に聞く 1 5%
その他 Android版三国、WindowsATOK日国精選版 1 5%
その他 假名遣を紹介してゐるサイトや、青空文庫の作品(正假名で書かれた書物) 1 5%

※冊子にしろオンライン版にしろ、辞書で調べる習慣は大切ですね。

正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣で文章をお書きの方に質問です。どんな道具で書きますか。(複数回答可)

21 件の回答

紙に筆記用具で 16 76.2%
パソコン 14 66.7%
スマートフォンタブレット 14 66.7%

※インターネット全盛の時代ではあっても、「紙に筆記用具で」はまだまだ健在です!

正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣の文章をパソコン・スマートフォンタブレットでお書きの方に質問です。どの日本語入力ソフトで書きますか。(複数回答可)

19 件の回答

ATOK 7 36.80%
Microsoft IME 7 36.80%
Google日本語入力 9 47.40%
Mozc 0 0%
松茸 1 5.30%
漢直系 0 0%
手書き入力 3 15.80%
その他 SKK 1 5.30%

ATOKMicrosoft IMEGoogle日本語入力の「三強」の中でうまい具合にばらけました。それぞれ好みがあるのかもしれません。

正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣の文章をパソコン・スマートフォンタブレットでお書きの方に質問です。どのかな漢字変換辞書を使用して書きますか。(複数回答可)

16 件の回答

ATOK(文語モード) 6 37.50%
快適仮名遣ひ 2 12.50%
北極三號系(野嵜健秀氏による辞書や「餠辞書モバイル」も含む) 5 31.30%
契冲 1 6.30%
自作辞書 5 31.30%
漢直系なので不要 1 6.30%
手書き入力なので不要 1 6.30%
その他 韓国語IME 1 6.30%
その他 SKK 1 6.30%

※何が驚きかって? 「自作辞書」が5人も居る事です。そこまでやるか!?(褒め言葉)

あなたの身近には、日常的に正漢字(旧漢字)または歴史的仮名遣で文章を書く人が居ます/居ましたか。(複数回答可)

21 件の回答

祖父母 6 28.60%
父母 0 0%
兄弟姉妹 0 0%
それ以外の親戚 0 0%
学校の先生 1 4.80%
職場の人 0 0%
身近な友人・知人 2 9.50%
インターネットの友人・知人 15 71.40%
その他 いない 1 4.80%
その他 ウェブの「知らない人」しかゐない 1 4.80%

※私が子供だった昭和時代、「祖父母が戦前教育世代で、戦後も当用漢字や現代かなづかいに転向せず従来の表記を続けた」光景は当たり前にありました。それが今では「祖父母」よりも「ネットの友人・知人」の影響の方が断然大きくなりました。

あなたの身近には、新漢字の中に、時折、正漢字(旧漢字)が混じる人が居ます/居ましたか。

27 件の回答

はい 9 33.3%
いいえ 15 55.6%
わからない 3 11.1%

あなたの身近には、新仮名遣の中に、時折、歴史的仮名遣が混じる人が居ます/居ましたか。

27 件の回答

はい 10 37%
いいえ 14 51.9%
わからない 3 11.1%

※この二つの質問は、戦前教育世代だが新字新かなに転向した人や、昭和20年代の国語改革過渡期に学校教育を受けた人の影響を調べるためのものです。そんな人が身近に居ると「日本語のもう一つの書き方の痕跡」が伝聞ではなく身近な体験としてわかります。そこそこ多いみたいです。

歴史的仮名遣による現代口語文を読んだ事がありますか。あるとしたら、どこで読みましたか。(複数回答可)

27 件の回答

戦前の本 21 77.80%
戦後の本 20 74.10%
戦前の歴史を扱った資料集 10 37%
手紙 4 14.80%
電子メール 5 18.50%
SNSへの投稿 20 74.10%
ウェブサイトやブログ 19 70.40%

※「戦前の本」「戦後の本」は、初版の発行日の事なのか、読んだ本自体の発行日なのかを書くのを忘れました。次回のアンケートでは改善します。「SNS」「ウェブサイトやブログ」が、本と同じほどよく読まれるのが印象的です。

正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣での書き方をご存知の方に質問です。書き方をどこで学びましたか。(複数回答可)

24 件の回答

戦前の文献 10 41.70%
国語辞典や漢和辞典 11 45.80%
戦前の国語便覧 1 4.20%
戦後の国語便覧(当用漢字/常用漢字や現代かなづかい/現代仮名遣いの一覧を載せたもの) 3 12.50%
「私の國語教室」など戦後に書かれた手引書 12 50%
インターネットのウェブサイト 12 50%
戦前の国語教育を受けた人から直接 1 4.20%
戦後世代だが書き方を知る人から直接 4 16.70%
その他 小説や手紙などで読んで自然と。 1 4.20%
その他 学校で文語文法を学ぶうちに 1 4.20%
その他 餅(野嵜健秀)や熊(押井徳馬)からSNS経由で。 1 4.20%

※戦前教育世代から直々に学ぶ機会は少なく、「見て盗む」事が多かった気がします。「書き方」となると、正字正かなを擁護する意見を発信する人の本やウェブサイトが情報源になる事が確かに多いものです。次回のアンケートでは「俳句や短歌の手引書」も選択肢に追加予定です(雑誌では、仮名遣の解説特集が組まれる事もある)。

正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣で書いた事のある方に質問です。以下のうち、特に影響を受けた人や本などはありますか。(複数回答可)

20 件の回答

福田恆存(著書は「私の國語教室」等) 11 55%
丸谷才一(著書は「国語改革を批判する」「桜もさよならも日本語」等) 4 20%
萩野貞樹(著書は「旧かなづかひで書く日本語」「旧かなを楽しむ」等) 3 15%
土屋秀宇(著書は「学校では教えてくれない 日本語の秘密」「日本語「ぢ」と「じ」の謎」等) 2 10%
言葉 言葉 言葉(インターネットサイト) 11 55%
歴史的仮名遣い教室(インターネットサイト) 3 15%
正かなづかひ 理論と實踐(同人誌) 4 20%
みんなのかなづかひ(同人誌) 3 15%
コンピュータによる旧字旧かな文書作成入門(同人誌) 2 10%
祖父母 2 10%
父母 0 0%
それ以外の親族 1 5%
学校の先生 3 15%
俳句や短歌の関係の友人・知人 2 10%
政治関係の友人・知人 0 0%
神社関係の友人・知人 0 0%
身近な友人・知人 1 5%
インターネットの友人・知人 7 35%
國語問題協議會 2 10%
その他 青空文庫 1 5%
その他 なし 1 5%
その他 橋本進吉時枝誠記大野晋 1 5%

※予想の範囲内でしたが、「私の國語教室」を書いた福田恆存と、インターネットサイトの「言葉 言葉 言葉」の影響が大きいものです。「旧字旧かな=右翼、政治的保守派」と誤解する人が一部に居るため、「政治関係の友人・知人」(小堀桂一郎長谷川三千子あたりの人脈の影響を受けた人は果たして居るか?)「神社関係の友人・知人」(神社本庁の出す新聞も歴史的仮名遣で書いてるはず)を候補に入れましたが、残念ながら?ゼロでした。

正漢字(旧漢字)または歴史的仮名遣で書いた事のある方に質問です。周囲の反応はいかがでしたか。(複数回答可)

21 件の回答

ほめられた 2 9.50%
特に反応なし 16 76.20%
叱られたり反対されたりした 4 19%
周囲は知らない 3 14.30%
忘れた 1 4.80%
その他 「古文」と言はれたりしました。 1 4.80%
その他 「ふーん」みたいな感じ 1 4.80%

正漢字(旧漢字)または歴史的仮名遣で書く事に反対された事のある方に質問です。その理由は何でしたか。(複数回答可)

12 件の回答

新漢字や新仮名遣と混乱する 1 8.30%
新漢字や新仮名遣を習得できたかどうか先生がわからない 0 0%
旧漢字や歴史的仮名遣を「正しい」と決め付けるのは誤りだ 2 16.70%
右翼と誤解される 1 8.30%
相手に通じない可能性のある書き方で書くべきではない 7 58.30%
素人が書くものではない 3 25%
知識のひけらかしに見える 4 33.30%
気持ち悪い 4 33.30%
わからない 1 8.30%
忘れた 0 0%
特になし 1 8.30%
意図がないなら現代俳句では使わないほうがいい 1 8.30%

※「理由」は、だいぶばらけましたが、「相手に通じない可能性のある書き方で書くべきではない」を理由に反対する人がやはり多い様子。「右翼と誤解される」がほとんど居ないのは意外でした。次回のアンケートでは「時代遅れの書き方だ」「戦前回帰の書き方だ」も選択肢に追加する予定です。(この二つの質問、「叱られたり反対されたりした」の少なさの割には、反対の理由の回答が倍以上あるのが謎ではありますが)

以下のうち、あなたの意見に近いものはありますか。(複数回答可)

25 件の回答

旧漢字や歴史的仮名遣の一番の良いところは「美しさ」だ 6 24%
旧漢字や歴史的仮名遣は非合理的で面倒だが、その不便を楽しむのが魅力だ 2 8%
美しい国語」としての旧漢字や歴史的仮名遣は認めるが、「正しい国語」としてのそれは認めない 5 20%
初めての人に宛てた文章を正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣で書くのは避けた方がいい 5 20%
漢字は廃止すべきだ 0 0%
正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣は合理的な部分がある 20 80%
正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣で書くのは、ご先祖様がその表記で書き続けてきたから 8 32%
新漢字や現代かなづかいを導入した戦後の国語改革は「国語を破壊する悪い改革」だった 13 52%
国語を正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣に戻すべきだ 16 64%

※「漢字は廃止すべきだ」を含めそれ以前が、正字正かなを「特殊な用途としては認めるが、日常の表記としては認めない」人に多く見られる意見、残りが正字正かなを「日常の表記として使用する」人に多く見られる意見、として用意してみました。次回のアンケートでは「正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣には教養を感じる」を候補として追加する予定です(「みんなのかなづかひ2019」読者からの提案)。

正漢字(旧漢字)や歴史的仮名遣について、ご自由に意見をどうぞ

6 件の回答
初めての人に旧仮名で話しかけるなとは言わないが、旧仮名を使うことについて一言断ってあると印象がよくなると思います。ちょっとした一言があるとないとで、顔の見えないインターネット上ではかなり印象を左右すると思います。
僕は俳句をしてゐるのですが、定期テストとかでも無意識に解くと間違えて歴史的仮名遣ひになってしまうのでどうにか頑張って直してゐる
正しいものを正しいと認識できない人が多いのは残念な事かと
日本人の大多数が、表記やその歴史、国語改革についてあまりに無知・無関心なのが由々しい事態だと思つてゐます。
もっと道具的にも状況的にも、正字正かなをもりもり潤沢に使いたい。
昔の人の文章の假名遣ひまで「直」されてしまふのは、非常に残念です。

同じく12月3日~8日まで、次の二つのアンケートもインターネット上で実施しましたので紹介します。

追加の質問です。あなたは旧漢字による文章をどれほど読めますか。一番近いものを選んでください。

26 件の回答

大体わかる 17 65%
半分位はわかる 5 19%
人名漢字にあるもの位なら少しわかる 3 12%
嫌になるのであきらめる 1 4%

追加の質問です。あなたは歴史的かなづかひによる現代の文章をどれほど読めますか(漢字が新漢字の場合)。一番近いものを選んでください。

28 件の回答

大体読める 24 86%
半分位は読める 2 7%
読み方がわからないものの方が断然多い 1 4%
嫌になるのであきらめる 1 3%

※繰り返しますが、このアンケートはインターネット上、それも私を知る人が多めであるので「偏りなく集められたサンプル」ではなく、飽くまでも「参考程度」です。それでも正字正かなを「大体読める」人が半数以上。仮名遣に至っては大体の人が読める(中学校で学ぶし勘でも大体読めるもの)。