くまちゃん、文学フリマin大阪に来たったで〜

 4月14日、中百舌鳥駅近くの「堺市産業振興センター」で開催された「第十六回文学フリマin大阪」にサークル参加してきました。
(他の参加者の感想レポートは http://d.hatena.ne.jp/jugoya/20130414トラックバックを参照)
 前日には京都に入つて「たまこまーけっと」の聖地巡礼の旅を……と思つてゐたのですが、残念ながら仕事が入つて仕舞ひました。新幹線で新大阪駅に着いたのは夜の10時半頃。それから地下鉄御堂筋線に乗り換へて移動。今回はわざわざICOCAを用意しなくても、いつも使つてゐるモバイルSuicaで大阪の地下鉄や私鉄に乗れるのが非常に便利です。


地下鉄車内の「ドアに注意」のステッカー。ユニークなデザイン。

西成なんか怖くない

 往路・復路とも新幹線のぞみ指定席と云ふ一点豪華主義の代償に、宿は釜ヶ崎(「あいりん地区」とか、区の名称を取つて「西成」と呼ぶことも多い)の安宿。2,000円でも高い方と云ふのがこの界隈の相場です。
 本来は、我々旅行者のやうな短期滞在者ではなく、日雇ひの肉体労働をしてゐる人向けに長期で素泊まり出来る簡素なサービスの宿(簡易宿泊所、俗に「ドヤ」とも)を提供してゐた街です。しかし、そんな日雇労働者も高齢化し、今では簡易宿泊所から高齢者向け福祉アパートに模様替へしたり、外国人を含む旅行者向けの安価な宿としてリニューアルしてゐる所も少なくありません。
 ところで、これから載せる写真を見て、「何か変だ」とお思ひの方もいらつしやると思ひます。さう、住人の姿があまり写つてゐないのです。よくある噂に反して、私は三度の西成来訪で三度とも街の風景を撮影しましたが、一度も撮影を止められた事がありません。私の場合、「住人を特定出来る写真」と「明らかな違法行為」(海賊版DVDや闇たばこの露店等)はなるべく撮影せず、人の写らない風景中心に撮影する事、そしてなるべく目立たないやうに撮影する事で、住人とのトラブルを最小限に抑へることにしてゐます。
 閑話休題。動物園前駅を降りると、早速宿に向かひます。新世界のジャンジャン横丁の大通りを挟んで向かひ側の、動物園前1番街(飛田本通商店街)入口附近にあると云ふ、串カツ大好きな人には絶好の場所にある宿(通天閣でおなじみ、皆さんご存知の新世界と、釜ヶ崎は、隣同士の街です)。しかも素泊まり一泊1,900円と激安。外国人観光客も多く、私の前にはタイ人女子4人組がタイ語で何やらおしやべりしながら歩いてゐました。また、動物園前1番街入口あたりにある、おでんも出してゐる飲み屋では、普通にサラリーマンらしき人達が酒を飲んでゐました。




今回の宿、「サンプラザII」。(朝に撮影)



簡易宿泊所は三畳一間に薄い布団、卓袱台、テレビと云ふのが典型的。
なほ、今回の宿は寝間着は用意されてゐなかつたので、持参して来ました。その分安いのです。


今回の相棒、おでんさんの宿の前の張り紙。門限破りは許しまへんで!


 宿に荷物を置くと、早速近くを探検。しかし、大半の店が閉まつてゐました。この西成界隈の宿は門限のある宿が多いので、夜は静まり返つてゐるのです。「じゃりン子チエ」の舞台である萩ノ茶屋(旧地名は「西萩」)まで行きましたが、もうこの近辺は、開いてゐる飲み屋は一軒もありません。



高齢者や日雇労働者を支援する活動もなされてゐるやうです。


「注射器を捨てるな、の張り紙がトイレにあるコンビニ」と噂されてる所に行つたが、肝腎のトイレ自体が存在せず。この噂流した奴出て来い!
ちなみにこの界隈は病弱な人も多いので、インシュリンの注射針くらゐなら捨てられてもをかしくないと思ふが、それすら実際に見た事は一度もないし、ましてや違法薬物の売人を見た事など私は一度もない。


 そんな訣で、お隣の新世界に移動して串カツとビール。もちろんソースの二度漬けは禁止です(お約束)。久しぶりの串カツはうまかつた!



新世界。長らく廃墟になつてゐたウォータースライダーは撤去されて更地に。



新世界のゆるキャラ、くしたん。可愛いです。


新世界名物、串カツ。ソースの二度漬け禁止です。


「ジャンジャン町」それとも「ジャンジャン横丁」?


ジャンジャン横丁と動物園前の商店街を結ぶ地下通路もお洒落に変身してゐます。


 宿で風呂の使へる時間帯はとうに過ぎて仕舞つたので、朝起きてから近くの銭湯「入船温泉」に。前にもこの銭湯に来た事があり、深夜だつたので人がまばらだつたのですが、今回は朝だからなのか、沢山客が来てゐました。恐らく半分以上がこの界隈の住人です。昔ながらの古き良き銭湯で、十分暖まつた後は、近くを散歩。



入船温泉。


 釜ヶ崎の住人は大半が高齢の男性です。怖いどころか、病弱で足がふらふらしてゐて「おい大丈夫か」と云ふ人もちらほらゐる位です。むしろ違法労働やら生活保護費のピンハネやらの被害者も時々ゐると、ニュースやドキュメンタリー番組で言はれてゐます。
 「この界隈は治安が悪いから避けた方が良い」と云ふ噂が流れてゐるので、心配してゐる人も多いかも知れませんが、私が三度行つた経験からすると、他の町に比べて極端に治安が悪いわけではありませんし、そこそこディープな所にも足を運んではゐるつもりですが、それでも身の危険を感じた経験は今のところ一度もありません。「オタク趣味は幼女誘拐につながる」と云ふ思ひ込みと同じ位、根拠の乏しい噂だと私は思ひます。
 まあ、贔屓目に見ても清潔感の有る街とはとても言へない、ゴミだらけであちこち消毒薬の匂ひがぷんぷん漂ふやうな街である上(と書いたものの、所によつては綺麗に清掃されてゐる場所も少なくなく、街の美化の為に地道に努力してゐる人もゐる事を感じた)、日雇労働者生活保護受給者とホームレスと外国人観光客と云ふ、何だかネットの特定の人々に叩かれさうな階層の人が多くゐる街でもあり、警戒心や野次馬根性から根拠の乏しい噂が生まれて仕舞ふのかも知れませんが……

 さて、3年前に来た時には、南海本線のガード下に何百メートルも露店が並んでゐました(通称「泥棒市」)が、去年来てみると、露店の大半が無くなつてゐて、代りに中古の雑貨等を売るテント小屋が出来てゐました。取り扱ふ品物も変つていくらしく、3年前には電動工具と湿布薬を非常に多く見掛けたのですが、住人の高齢化ゆゑ働く人が減つたのか、以前ほどは見なくなりました。去年くらゐまではカセットテープやらビデオテープやらも結構健在だつたのですが、今年はビデオテープが激減して海賊版DVDだらけになつてゐました。


あいりん労働福祉センター。普段は日雇ひ仕事を貰ふ為に沢山の人が並ぶらしいが、休日で遅い時間のためその光景は見られず。右側に見える通りの両側は、かつて泥棒市で賑はつてゐました。


労働者の街なので作業服の店もあちこちに。


貸しロッカーに月極価格があるのが住所の決まつてゐない人を多く抱へる西成らしい。


50円の自販機も多い。


茶店うどん屋。関西なのでトーストは四枚切り。



一泊1,200円と安いですが、チェックイン終了は20:30とものすごく早いです。
この界隈は、安い宿ほどフロント業務簡素化の為に門限が厳しいので注意。



天下茶屋」の歴史の由来、気になります。


衣料品店。古着?それとも新品?



こんな露店があちこちにあります。我々旅行者には誰得な商品ばかり並んでますが……


福祉住宅の入居をすすめる張り紙。
日雇労働者から正社員にスイッチするのは難しい上、高齢で以前のやうに働けなくなつても年金だけで生活するのは困難で(そもそも年金が支給されるかどうかも……)、結局生活保護に頼る以外に道が無くなつてしまつた住人が多く、日本の労働や福祉の問題点と言へます。


高架の上に通天閣が。「じゃりン子チエ」に良く出て来るシーンに似た景色。


 結局冷やかすだけで何も買はずに終はつて仕舞ひましたが、歩いていくと萩ノ茶屋駅に到着。一部の人々をカオスな魅力の虜にさせる“魔境”ともそろそろお別れです。一緒にサークル参加するおでんさん(関東在住)と一緒に、電車で中百舌鳥駅へ移動。
 他の文フリ参加者のレポートでは「中百舌鳥は梅田から電車で30分も掛かるので遠い」と云ふ意見がありましたが、釜ヶ崎(最寄り駅は新今宮・動物園前・萩ノ茶屋あたり)からだと電車で20分前後で、あつと言ふ間に着きました。と云ふか、30分つて遠いかなあ?

残念過ぎる壁サークル

 会場は駅から歩いてしばらく行つたところ。何だか電波がゆんゆん飛んでさうな不思議なオブジェの向かうにあるのが、今回の会場です。



イベント会場、堺市産業振興センター


 もう一人のサークル参加者、名賀月さん(関西在住)と合流すると、会場へ。今回の会場は体育館?で、壇を上がつたところが見本誌コーナーと云ふのがユニーク。さて、「今回は壁サークル!るんるん」とサークルスペースに行つてみると、もう、あまりの残念さに笑ふしかありませんでした。サークルスペースの後ろがあまりにも狭くて、「通ります」と声を掛けてどいて貰ひながらやつと人一人通れると云ふ有様。後ろに荷物を置く事さへ出来ない、島中以下の壁サークルです。追加イスも申し込んでゐたのですが、最初からある椅子が大きくて、もう一つを置くスペースなんて確保出来ませんから、泣く泣く断念しました。
 それにしても、サークルスペースの机の上に置かれたチラシの少なさにもビックリ。普段の文フリの何分の一かしかありません。今後関西の文学フリマが定着した時には状況は変化するのでせうか……?
 さて、うちのサークルは既刊本がやたら多いのが特徴。原因の半分以上は姉妹サークル「書肆言葉言葉言葉」が過去一年あまりの間に11冊も発行したからなのですが、このヴァイタリティはある意味すごいです。そんな訣で、平積みにするのは新刊とペーパー中心、後は段ボールでこさへた「既刊箱」に、まるでレコードのやうに並べて陳列。



サークルスペース


 大阪、それも都市部から少し離れた中百舌鳥でどれだけ人が集まるのだらうと云ふ不安もあつたやうですが、それを良い意味で裏切るやうな大盛況で、沢山の一般参加者が来てゐました。評論サークルが賑やかで創作サークルが比較的静かな東京の文学フリマと異なり、大阪は創作サークルに非常に活気があつたのも印象的でした。それに、過去にサークル参加した関西コミティアでも感じた事ですが、東京よりもおしやべりが多くて賑やかなのが、大阪の地域性なのかも知れません。
 今回は、なかなかお会ひ出来ない関西在住の同人仲間と会ふ事が出来たのが一番の収穫。関西での文藝同人誌イベントは少ないので、今後も是非続けて欲しいと思つてゐます。
 それから、会場の隣にあるレストランのきつねうどんが美味しかつた事も付け加へておきます。淡口醤油であつさり香り高い関西風うどん、私は大好きですし、自炊する時の参考になります。



きつねうどん

在庫が二箱捌けたので特別うまい焼肉と仲良くしようぜ会、略称は在(以下略)

 帰りは大阪のコリアタウンとして有名な鶴橋に寄つて焼肉で打ち上げ。日本と朝鮮半島の間に政治問題や歴史認識の問題はあれど、喰ひ物の事となると話は別です。
 大通りと細長い敷地が特徴的な東京の新大久保と異なり、駅前の路地裏に焼肉店が所狭しとひしめき合ふ鶴橋。一仕事終つてからの焼肉は最高です。
 本当は監修者の野嵜さんも大阪に誘つて、鶴橋の焼肉屋で一緒に食べたかつたのですが、本人によると「関西に来たら殺してやる、と、ある人に脅されてゐる」との事で、安全のため来られなかつたのが非常に残念です。


焼肉をいただきます。皆さんおつかれさまでした。


 今回サークルスペースを手伝つてくださつたおでんさん、名賀月さん、そしてサークルに立ち寄つてくださつた皆さん、どうもありがたうございました。
 なほ、次回は4/28に幕張メッセで開かれる「超文学フリマ」にも参加予定です。また、新刊や既刊の通販も受付中です(http://osito.jp)。