「5/22の1号機再臨界」説は正しいか

 福島原発原子炉の状態 原子炉の放射線量にあるグラフによると、5/22に福島原発1号機のS/C(圧力抑制室)で36.2→196 Sv/h となっており、急激に放射線量が上がったように見えます。
 そのため、「ひょっとして、格納容器から圧力抑制室に漏れた燃料が再臨界を起こしたのでは?」という噂が一部で広まっているようです。しかし、その説は正しいでしょうか。結論は皆さんに考えていただくとして、ここでは二、三のヒントを書いておこうと思います。

圧力抑制室と格納容器の取り違え

 実は、東京電力福島原発放射線量を公開しています。
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/images/11052312_level_pr_data_1u-j.pdf
 この資料と、先のサイトの資料とを見比べると、大きな違いに気付きます。
 先のサイトのグラフで、放射線量が200 Sv/h 前後まで突然増えているように見えるのはS/C(圧力抑制室)ですが、東電の資料ではD/W(格納容器)です。S/C(圧力抑制室)は200 Sv/h ではなく1 Sv/h 近辺で落ち着いています。
 どうやら例のグラフは、圧力抑制室と格納容器を取り違えているようです。

数値が上がったのは格納容器の線量だけ

 数値が上がったのは格納容器の放射線量だけで、温度や気圧も、圧力抑制室の放射線量も、大きな変化はありません。再臨界のような大きなエネルギーを放出する現象がある割に、格納容器の放射線量だけしか上がらないというのも、何だか不自然です。

もっと細かい東電の資料でグラフを作成してみた

 また、東電の資料では1日8回程度データを収集していますが、先のグラフでは1日1回分しかプロットされていません。
 もし、もっと細かい東電の資料を基にグラフを作成してみると、どうなるでしょうか。D/W(格納容器)の線量(最初に挙げたグラフで、圧力抑制室と間違われていたもの)のグラフを早速描いてみました。

 5/22,23は線量が上がる一方なのではなく、実際には35〜200 Sv/h 辺りを激しく行き来しているのがわかると思います。これは信頼できる数値なのでしょうか、それとも「※計器不良」という但し書きの通り、計器故障や他の原因で正常な数値が出ていないのでしょうか。