モーニング娘。学会に行ってきました(下)

モーニング娘。学会に行ってきました(上) - 「変人」は褒め言葉の続きです。
 午後の部。同じ一人の人であっても、自分から見て、自分の属する様々な社会にいる他人から見て、様々な「わたし」像があること、また現在のネット社会におけるコミュニティの姿について解説する郁さん。リアル←→非リアルを縦軸に、表層←→本質を横軸にしたマトリックスを使って、松浦亜弥月島きらりを演じる久住小春Perfumeなどそれぞれのアイドルのイメージ戦略について、またアイドルが実名で活動することでスキャンダルにつぶされてしまうという問題点について語る斧屋さん。最後は「アイドル」という語の意味の歴史的変遷や、アイドル業界の深夜労働の問題など、業界の問題について解説するいぬいぬさんの発表でした。
 討論の間、様々な話題が上がりました。いつ頃からモーニング娘。はオタクのアイドルのように見られるようになっていったか(ASAYAN終了や、2ちゃんねるモー娘。メンバーのスレッドが立つようになった辺りが転換点ではないか?という意見が)、なぜ浜崎あゆみはオタクにあまり人気がないのか(確かに、どちらかというとヤンキー文化に支持されている傾向がある。親しみを感じる「萌え」というより、雲の上にいる「歌姫」という雰囲気だからかもしれない)、どうしてオタクは大きな顔や目のキャラクターという、リアルさに欠けるデフォルメされた造形のキャラクターに萌えを感じるのか(顔が大きい方が表情がよく見えるし、新聞の風刺漫画でもわかるように、人物画は、目立つパーツをデフォルメして描いた方がよりリアルに感じるから)、そして、アイドルの目からすると自分とファンは1対多の関係だが、ファンから見たアイドルは1対1のように錯覚してしまう事がある、という現象について。ワンフェスでのエスカレータ事故で、ニュースでも流れた「一段に三人乗っていた」という映像は、飽くまでもエスカレータが逆走して人がどんどん落下している瞬間の映像であり、この映像だけを元に、「正常に動いていた時点から一段に三人乗っていた」と結論づけるのは危険である、という話も出ました。
 郁さんの話だったと思いますが、「崖の上のポニョ」はある意味ギャルゲ的というか、そんな見方もできるという話も興味深かったです。何しろ、ポニョが一番最初に宗介に話した言葉が「ポニョ、宗介、好き!」なのですから。
 また、同じジュニアアイドルのファンでも、ハロプロ系アイドルが好きな人と、水着グラビア系?アイドルが好きな人とではだいぶベクトルが違うという話題にも。そういえば昼休みは、斧屋さんの発案で、ジュニアアイドル専門店なるところへ行くことになったのですが、私はてっきり、Berryz工房℃-uteや、「天才てれび君」のてれび戦士や、たらこキューピーのCMで有名なキグルミや、ポニョの主題歌で有名な大橋のぞみみたいな、そういう感じのジュニアアイドルのCDやDVDやブロマイドやポスターが売られている店だとばっかり思い込んでいました。ところがふたを開けてみると何じゃこりゃ。私が思い描いていたようなのは何もなくて、大半が水着姿がジャケットになっているDVDや写真集ではありませんか。それも子供らしい健康的な可愛らしさがそれほど感じられなくて、いわゆる「エロかわ系」というのか、年不相応のきわどい悩殺ポーズ?みたいなのを売りにしたものばかり。
 がっかりだよ!
 私はすっかり引いてしまっていたし、私が観察するに、他の人も恐らくそうであったかもしれません。というか、言い出しっぺの斧屋さんですら、すっかり買う気を失っていました。「この店で一番萌えと言えるのは、(隅のショーケースに展示されている、ジュニアアイドルの女の子の作った、)このいかにも小学生らしい工作だよね」と誰かが言いました。「そして、(同じくジュニアアイドルの女の子がたどたどしい字で書いた、)絵日記みたいな手書きの壁新聞も」と、私も付け足しました。こういう雰囲気のグッズばかりだったらどんなに良かっただろうに、がっかりだよ!
 結局、お店の人には悪いけど、みんな何も買わずに出て行くことになりました。「ま、ここらで社会科見学はお開きにしましょうか」と私。確かにDVDや写真集というおみやげは持ち帰りませんでしたが、「萌え」と「清純さ」についてや、自分達の「萌え」に対する態度について考えてみるきっかけを作ったという、別の意味でのpricelessな“おみやげ”を持ち帰ることにはなったかもしれません。*1
 何だかんだで、会場を借りている17時いっぱいまで目一杯議論が続いた後は、ヨドバシアキバ内のイタリアンレストランで夕食がてらの歓談。「普通、飲み会ともなると、こういうアカデミックな話題なんて自由に出来ない」という話題が出ました。今回の学会のように、そういうのが自由にできる場は非常に貴重だし、インターネットの登場によって、遠く離れていてもいつでもそういう話題に加わったり、仲間を見付けて集まることもできるようになって、便利な世の中になったものです。
 さて、今後の活動は……? 来年も同じような学会が開かれるか? エレンさんの執筆した内容は本になるか? 私も冬に向けて新しい計画を…? これからも目が離せない計画がいろいろあります。是非とも、それらの事がうまく運ぶことを願っています。

*1:とは言え、これは飽くまでも結果論です。私がこの店に行くことを推奨しているという意味ではないので念のため。