大阪ひとり旅(上)

 念願の大阪見物をとうとう果たしてきました。
 新世界〜日本橋〜道頓堀と、大阪見物としては定番中の定番スポットだらけなのですが、はじめての大阪ということで、堪忍してちょうだい。

標準語・標準アクセントだらけの大阪

 到着したのは夜。新大阪駅ICOCAJR東日本でいうSUICAのようなICカード乗車券)を買うと、地下鉄で通天閣のある新世界へ。
 考えてみれば当たり前の話ですが、電車の車内アナウンスはきちんと標準アクセントの標準語なのが、何だか大阪らしくなくてちょっとガッカリ(って、なんで大阪アクセント期待すんねん)。ただ、地名だけはちゃんと大阪アクセントになっているのが興味深いと感じました。
 たとえば、関東人は「難波」を「ナンバーワン」の「ナンバー」と同じく平板に発音しますが、大阪人の発音は、英語の単なる「number」と同じく、「なん」の部分にアクセントが来ます。英語の「number」のアクセントと同じ「なんば」と、覚えましょう。
 それはともかくとして、動物園前駅を降りると、屋台のたこ焼き屋が。何と8個で200円という、とても信じられない価格。関東じゃ、この値段じゃ絶対買えません。しかも、たこが大きめでうまい。
 「ありがとうございましたー! おおきにー!」。たこ焼きを買うと、たこ焼き屋のおっちゃんはお礼を言ってくれました。関東人の私はこれまでちょっと勘違いしていたのですが、「ありがとう」と「おおきに」は、全く同一の意味ではなく、少しニュアンスが違うみたいでした。(※なお、「おおきに」のアクセントは、「き」に来るみたいです)
 そういえば、その後も新世界〜道頓堀界隈のいろんな店を回りましたが、関東人がよく想像するような、「毎度おおきにー!」とか、単に「おおきにー!」という挨拶は、ただの一度も聞くことができませんでした。「ありがとうございました」か、「ありがとうございました、おおきに」のどちらかであり、しかも、お上品そうな店になるにつれて、標準語・標準アクセントの度合いが増していく気がしました(そんな店でも、店員同士のおしゃべりは大阪弁丸出しだったりしますが……そんな光景、ちょっと萌えかも)。
 大阪に着いたら漫才師とかじゃりン子チエみたいなコテコテの大阪弁のシャワーを浴びると思っている関東人は多いかもしれないけど、過度な期待?は禁物です。実際には、関東人が思っている以上に標準語・標準アクセントだらけだし、特に観光地はなおさらそういう傾向があります。

串カツ屋の合言葉は「ソースの二度漬け禁止」

 さて、通天閣です。写真では何度も見てきましたが、本物にお目にかかるのは初めて。

 残念ながら通天閣はもう閉まっていたので、上るのはあきらめて、腹ごしらえ。

 フグ料理で有名な「づぼらや」もありましたが、今回は行きませんでした。この界隈は、実は、串カツ屋がぶわああぁぁっとひしめいているので、むしろそっちが目当てです。
 関東人は「大阪グルメ」と聞くと「たこ焼き」「お好み焼き」は大抵挙げられますし、「たこ焼き器は嫁入り道具」「大阪人はたこ焼きをおかずにご飯を食べる」なんて冗談まで言うことがあるくらい有名ですが、「串カツ」は、たこ焼きほどには知られていません。
 さて、どの串カツ屋も行列ができていたり、満席だったり。比較的空いている店を見付けて入ると、早速メニューを見てみました。
 串カツをあんまり知らない人にとっては、駄菓子屋の魚のすり身の串カツとか、豚肉とねぎの串カツのイメージが強いかもしれません。でも本物の串カツは、駄菓子のと違ってペラペラの肉じゃないし、具のバラエティも非常に豊かです。牛・豚・かしわ(鶏)や魚介類はもちろんのこと、玉ねぎ・なす・ししとうなど、てんぷらになりそうな具なら、何でも串カツになります。卵とかチーズも人気です。
 註文すると、早速、具を串に刺し、衣を付けて揚げてくれます。テーブルにはソースの入った大きなステンレスの容器があって、そこに揚げたての串カツを浸して食べるのが何ともうまい。
 店内のあちこちに貼ってある「ソースの二度漬けは堅くお断りします」という文句の意味を、どうしてだろうと疑問に思っていたのですが、いざ食べてみて、ようやく意味がわかりました。このソースは、次に来たお客さんも同じ容器を使います。なので、食べかけの串カツを漬けてしまうと、口内細菌がソースをかもしてしまって不衛生になるから、考えてみれば当然です。
 それから、串カツを註文すると、大きめに切ったキャベツも一緒に付いてくるのですが、どうやって食べるのか、最初のうちは全くわかりませんでした。他の客の様子を観察してみると、これも手でキャベツを持ってソースに浸して食べるみたいです。もちろん、これも二度漬け禁止。油っこいものの合間にキャベツが良いアクセントになります。
 本場の串カツ、非常に気に入ったので、是非自分でも作ってみたいと思いながら、店を後にしました。
(次回につづく)