「職業:フリーター」は間違いか

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/5673/
 コラムニストの富岡周平は、上記ブログで、フリーターを「定職につかずぶらぶらしているのは職業と言わないはずだ」とか「彼らが無職と言えないところに、精神のあまえがあるのではないか」とこき下ろしている。
 しかし、果たしてその意見は正しいのだろうか?


 私は現在はフリーターではないが、過去に半年ちょっとの短い間だけだがフリーターだった時期もあるし、知り合いや友達にフリーター経験者が大勢いる。
 私が我慢ならないのは、「フリーター=怠け者」という偏見である。確かに、仕事が大嫌いで、できるだけ働く時間を減らしたいからフリーターになったという人もいないでもないし、実際にそういう人がいるのも身近に知っている。
 しかし、20代に平成不況の大波をかぶった若者たちは、好きこのんでフリーターの道を選んだ人ばかりではないのだ。正社員の求人がかなり少なくて、あっても倍率が高過ぎて落とされたり、残された求人は労働条件が悪かったり悪徳商法がらみの危ない会社だったりと、バブル期に就職活動していた人達には想像できないような世界だった。


 「若者は職業をえり好みし過ぎだ」と言うのは簡単だ。でも、自分の息子や娘が、労働条件が劣悪で半年もしないうちに発狂してしまうような会社とか、先物取引や会員権商法などの悪徳商法で人様を騙して一定のノルマを上げないと給料がもらえない会社とかに入って「よかったわね、ちゃんと正社員として一人前に働く事ができて」と喜ぶ親がどこにいるだろう。大学で高等教育を受けた息子や娘が、地元の機械工場のラインで組立工として働いたり、土建屋で作業服に腰道具のスタイルで肉体労働したり、スーパーで商品を運んだりレジ打ちをしたり、それらは正社員の立派な職業かもしれないが、普通は「もったいない」と言う人の方が多いのではないか。別に、肉体労働を蔑んでいるという意味ではない。大学で勉強した知識が仕事に活かせないことを悔やんでいるのである。


 しかし、社会に出たからには、とにかく働かなくてはならない。誰かさんみたいに、フリーターは人生の落伍者とか何とか、文句をぶつぶつ言ってるどころではないのだ。それならなぜ正社員ではなくフリーターを選ぶかというと、就職活動の売れ残りの労働条件が劣悪な会社で働いたり、自分の適性に全然合わない会社で無理して正社員として働くよりは、労働条件がましな会社でフリーターとして働く方が、まだいいというものだからである。


 「フリーターは税金を払ってない」うんぬんの発言に至っては、言語道断である。これは貧乏人だから仕方ないし、合法的な「節税」というものだ。フリーターでも正社員並みに給料をもらっているなら、天引きにしろ自分で申告するにしろ、正社員と同じく税金は払ってるはずだ*1
 自分たちは躍起になって「節税」をして、一円でも少なく税金を納めようとしたり、場合によっては不正な領収書を使ったりして脱税までしている。そんな人ほど、フリーターの事を「税金泥棒」だの何だのと悪口を吐くものだ。自分の払い逃れは自分の権利、他人が免除されるのは社会の迷惑、調子いいったら、ありゃしない。
 そんなにフリーターを「税金泥棒」呼ばわりしたいんなら、所得税を正直に申告して、年金保険料もちゃんと納めて、それもニコニコ笑顔で納めて、それからにしてもらいたいってもんだ。ついでにNHK受信料もな。


NoiZ備忘録
 閑話休題。先の富岡周平の意見に対する一つの素晴らしい回答がこのブログにあった。
 「主婦」だって、ある意味、職業扱いされる事がある。それと同じような意味で「フリーター」を職業扱いするのは、ふさわしいと言えるだろう。


 確かに「フリーター」も、厳密に言うなら「定職のない人」という意味では「無職」だが、「無職」は「職が無い」つまり「無業者」という意味と誤解される事が時々あるし、フリーターを安易に「無職」呼ばわりするのはデリカシーがない。働き者のフリーターはもっと社会から評価されて然るべきではないだろうか。

*1:もっとも、自分で申告すべきなのに申告せず脱税しているフリーターまで私は擁護する気はない。