交通博物館で映画三昧

 万世橋交通博物館が今月閉鎖する前にと、またまた交通博物館に行ってきた。今日は11時から4時半過ぎまで映画三昧。

青春急行列車(1935年、モノクロ)

 東海道線の旅と車内マナーを、恋愛劇を交えたホームドラマに仕立てた作品。
 入った扉を閉めなかったり、ごみを車内にポイ捨てしたり、食堂車で酔っ払ってボーイさんにからんだり、混んだ車内で座席を二人分使って寝ていたり(腹痛を装っていたかと思うと、隣にお年頃のお嬢さんが来ようとすると途端に元気になるのはお約束)、「近頃の若いモンは」と愚痴をこぼす今のじっちゃんばっちゃん世代にも、マナーの悪い人は確かに多かったもの。
 食堂車といえば、当時の食堂車のウェイトレスはヘッドドレスにロングスカートのワンピースに胸当てつきの白いエプロンという出で立ちの、いわゆる古風なメイドさんスタイル。メイド喫茶の起源ここにあり!?
 丹那トンネルが出来たばかりの頃で、当時いかに日本を代表する新しく便利なトンネルだったかが描かれていたのが印象に残った。とは言え、東京を朝出ても、到着は夜になってしまうこの時代。新幹線以前の時代は東海道線の旅も今より大変だったのだと改めて感じさせられた。

鉄輪(1940年、モノクロ)

 以前にもここで見たことがある作品をもう一度。増大する鉄道輸送の需要への対応と、豪雪地帯での雪との戦いを描いた作品。トラックやクレーンなど今でも使われる機械もいろいろ登場する反面、当時は人力に頼った部分も多かったようだ。

華北交通〜社員生活(1943年、モノクロ)

 中国大陸の華北地方に住む鉄道従業員たちの生活を描く。とは言え、日本人居住区だからなのか、ほとんど日本語ばっかり。女子従業員に至っては和室で華道とかお箏とかやってるし。
 寮に住むオトコ共は広間のラジオでふるさと房総半島の便りを聞いたり、大風呂でみんな輪になって背中を洗ったり(こんな風景、映画じゃなきゃ、やらないよな)。
 家族もお父さんと子供が仲良く職場と学校に向かい、中には新たに赤ん坊も生まれたり。
……しかし、映画の中ではこんな元気そうな姿を見せている彼らも、実際には反日ゲリラに脅えながら生活していたのかもしれないし、二年後には、盗賊におびえながら命からがら本土に逃げることになったり、あの赤ん坊の中にも残留日本人孤児として親と生き別れになってしまった子たちもいたのだろうことを考えると、胸が痛くなる。

アルプスの少女ハイジ〜もう一人の家族(1974年、カラー)

 テレビシリーズの第4話と同じ。でもハイジやペーターやおんじを、テレビのブラウン管ではなく生のフィルムで初めて見られたのには感激。
 ヨーゼフが食べちゃいたいくらい可愛いピッチーの話。

国鉄復興(1947年、モノクロ)

 GHQの思想教育と検閲が真っ盛りで、メーデー赤旗が高らかに翻っていた時代である事をうかがわせる作品。とにかく突っ込みどころ満載の、ある意味トンデモなプロパガンダ映画。
 駅のラッシュアワーのシーンで始まるが、この姿がなぜか軍閥・財閥が欲望のままに起こした侵略戦争のせいにされている。財閥の社長は社長机にふんぞり返って葉巻をくゆらせているのはお約束か。
 本来は、戦火で被害を受けた国鉄車輌や橋などの再建についてメインに扱うつもりだっただろうが、GHQチェックが入ったためなのか何なのか、軍閥・財閥・官僚の戦時下の悪事を糾弾し労働運動をたたえる内容が変に混ざりこんで、何だかわけわからん作品になっている。
 しかしながら、当時の歴史を残す資料としてはとても貴重で、参考になった。一応フォローしておく。

生れかわる客車(1953年、モノクロ)

 擬人化(声のみ)された木造客車たん…もとい木造客車くん(木造客車の声は男だった)が、台車から上を切り離されて、工場で鋼鉄製の客車に生まれ変わる話。
 昔はほとんど職人芸で作っていた客車も、冶具や大型の工作機械を使ったり、部分品(昔は「部品」のことをこう呼んだ)の大量生産により効率化されている様子が描かれていた。

つばめを動かす人たち(1954年、モノクロ)

 東海道線の特急つばめ号の話。当時は名古屋まで電化されたのでそこまで電気機関車で、その先は非電化区間もあったので先頭を蒸気機関車に付け替えて大阪まで行ったそうな。電気機関車だからこそ、長い長い丹那トンネルも煙に悩まされず快適になったという。
 当時の駅の風景だけでなく、沿線の景色もよく映っていて、時代を感じる作品であった。

怪傑ライオン丸(1972年、カラー)

 初めて見た作品。アニメじゃなくて実写で、忍者の男女子供三人組が悪と戦う内容の昔のテレビ番組らしい。「ドラえもん」に出てきた「ライオン仮面」の元ネタとなる作品、と言う方が今では通りが良いかもしれない。
 主人公が頭だけライオンに変身して超人的能力を発揮するというのが、今見ると、失礼だけど笑ってしまう展開。こういう(良い意味での)馬鹿馬鹿しさも、見ててスカッとする。どうやら現代の子供にも受けがよかったみたいだ。

雪にいどむ(1961年、カラー)

 今日初めてのカラーの鉄道映画。雪国の空の青い色がまぶしい。この作品ばかりは子供たちの食いつきがよかったような。
 「鉄輪」で描かれていたラッセル車ロータリー車等(キマロキ編成なんて言葉も初めて知った)や、人間の手による雪かきに融雪溝に雪捨て列車も未だに現役だったが、この時代になると、もっとハイカラな技術が出てきている。
 たとえば蒸気機関車に押してもらわずに、エンジンで自走できる小回りのきくラッセル車、電熱で雪を溶かせる装置のついたポイントなど。複線区間も増えてきたためか、両側ではなく片側に雪をのける複線用ラッセルも登場している。
 また、雪害対策の研究もされていることが描かれている。模型を使った人工降雪実験や、火薬爆発で人工雪崩を発生させる試験など。

伸びゆく鉄道(1960年、カラー)

 特急こだま(新幹線ではない)、寝台特急さくら、修学旅行列車などの様子や、蒸気機関車が廃止されながら徐々に電化されたりディーゼルに置き換わったりしていくところを描いた作品。
 設備もこの先のハイテク時代を予見させるものが少しずつ出始めている。貨車の積荷に関する情報はテレタイプで瞬時に他の駅に伝えられ、次にその情報が入力された鑽孔テープ(穴の開いた紙テープ)を使って制御される自動ポイントは、貨車を一輌ずつ自動的に仕分けしてくれる優れもの。
 NHKプロジェクトXでご存知の方も多いかも知れないが、特急の座席予約にコンピュータが導入されたのもこの頃。ボタンを操作すると3秒で答えが返ってくるという、当時としては画期的なシステムだった(映画には出てこなかったが、その前は予約帳簿を手作業で付けていたため、長蛇の列で大変待たされたという)。まだ自動発券システムは付いてなかったが、近い将来付くだろうということだった。
 最後の方では、新幹線計画や新幹線実現に向けて丹那トンネルをもう一本掘ったり、特急こだまを使って160km/hを出す実験をする様子なども出てきた。この数年後にはちゃんと実用化されているのだから、すごいものだ。

まんが偉人物語 ベートーベン ワット(ビデオ、カラー)

 映画が始まる前は、実写のお姉さんとバクに似たぬいぐるみがタイムスリップしてアニメの世界に入り、ベートーベンやワットの功績を紹介するという内容の作品かと予想していたが、実際に見てみると、とんだ大違い。児童教材のセールスマンあたりが売ってる超マイナーなビデオアニメみたいな雰囲気の、ありきたりのB級教育アニメだった。各々約15分という制約があるのはわかるけど。
 特にベートーベンの方は、事前知識のある大人にはわかるだろうけど、子供にはストーリーがわかりづらいかもしれない。でもこういうのを上映するのは、子供向けの映画と言っても単なる娯楽作品だけではなくて教育的なアニメもちゃんとやってます、という姿勢を見せるためだろうか?