60代のハローワーク

 私は、高齢者の労働市場というものが近い将来注目されるのではないか、と予測している。つまり、高齢者の働き口というものが今までになく要求される時代が、きっと将来(恐らく我々が老人になる頃までには)やって来るだろう。そういう風潮の追い風となる要因が幾つかある。
 まず、年金をもらえない人のための就職口が必要である。老後は、年金を頼りにするか、子や孫に養ってもらうか、働き続けるかという道がある。年金も頼りにできず、たとえ子や孫がいたところで頼りを期待できず、そうなれば働き続けるしかない。特に、現在国民年金を払い逃れしている人は結構多いが、彼らには深刻な問題だ。そこで、高齢者の労働市場を期待する声が上がるだろう。
 次に、近年、年寄りが昔より丈夫になりつつある事である。若者と対等とまではいかなくとも、そこそこ体力があって健康に働ける人がこれから先どんどん増えるのではないだろうか。家でゴロゴロしてても濡れ落ち葉と言われて邪魔扱いされるだけだし、健康なうちは働きたい、と思う人もいるだろう。
 それから、少子化は高齢者の働き口を少しは増やしてくれるかもしれない。若者が減った分の労働力をどう補うかというと、安易に外国からの移民に頼るまでもない。日本の高齢者がたくさん余っている。


 ところが、そううまくは事が運ぶわけがなく、問題が一つ残っている。供給は多いのだが、需要は供給に見合うほどは無いと思われる。つまり、安く買い叩かれることになる。
 これを解決するには、方法が二つある。一つは、需要を目ざとく発見する事である。たとえば老人介護。少子高齢化社会とは、介護の必要な老人の増える社会でもある。これを若者への負担と見るか、需要ある分野と見るかで大きく変わってくる。この需要を引き受けられる健康な供給元がこれから有り余る時代が来るだろう。これを逃さない手はない。
 もう一つは、安さに甘んじる事である。子育ても終わり、家のローンも払い終わったというのに、30代40代の頃より高い給料を何に使うというのだろう。若い頃より給料の安い仕事であっても、ビル清掃みたいにみんなのやりたがらない汚れ仕事だろうと、とにかく目ざとく見つけて、えり好みせずやっていかなくてはいけない。ここらへんは、過去にフリーター経験のある人なら、プライドや偏見に邪魔されることなくやっていくのが容易なのではないかと思う。もしかしたら、将来は高齢者フリーターの増える時代になるかもしれない。
 ついでに言うなら、「最近の若者にはフリーターなどと言って定職にもつかずブラブラしてる奴が多くてけしからん」という文句は、子供のスネをかじってたり高い年金で遊び暮らしている高齢者だけには言われたくない。*1そんな寝言を言ってるジジイこそ怠けず働け。それも正社員としてな! フリーター青年たちの方が、彼らよりもよっぽどちゃんと汗水流して働いてるし、恐らく老後も死ぬまで働き続けるだろう。


 ところで、現在国民年金を「払い損だから」と安易に払い逃れしている人は、果たしてここらへんの事を、少しでも考えているだろうか。年金を受け取る気がないのならないで、その代わりどうやって生活するつもりなのか位は少なくとも考えろ、と言いたくなる時がある。

*1:現在の私はフリーターでもニートでもないが、十年くらい前のほんの短い期間だけ元フリーターだったこともあり、フリーターを馬鹿にするような言葉はとても許せぬ。