男の少女漫画マニアに「NANA」より「ハチクロ」の方を好む人が多い?理由

 男の少女漫画マニアの間では、矢沢あいの漫画を読んでいるという声をあまり聞かない気がする。かく言う私も矢沢あいの漫画は少々苦手で(好きな人はゴメン)、五年以上前の話だったと思うが、小学生が読んでる「りぼん」に連載のくせに「ご近所物語」でベッドシーンを描くなどもっての他だと怒って、それ以降矢沢あいの作品を避けるようになったのがきっかけだった。後に「NANA」という漫画を描いて映画化されたという話を聞いたが、不良少女っぽいというか、どこかスレた女の子の話のようで、そういう話が好きな人も多いのだろうけど、私としてはあまり興味がわかなかったのだった。

 男の少女漫画マニアで「NANA」が好きでないと言う人の意見を時々耳にするが、やはり、どこかスレてる主人公とか、エロ要素を含むストーリーとか、そこらへんが嫌いという人が多いように感じる。ヒロインの女性の視点にしろ、相手の男性の視点にしろ、感情移入が難しいのかもしれない。

 一方「ハチミツとクローバー」略して「ハチクロ」はベタベタな純愛路線、矢沢あいの作風とはまるで対照的だ。たとえば「人が恋におちる瞬間をはじめてみてしまった」とか何とか、まあ、ぞぞっとするほど恥ずかしい(誉め言葉)独白が、それも男の子の言葉で、繰り返される。主人公もキッスはおろか告白すらなかなかできないほどの、純情を絵に描いたような人物である。全体的な雰囲気ものんびりまったりしている。

 ハチクロは少女漫画なのに、男の子が純な恋愛でときめく気持ちや悩む気持ちを、男の子の視点から描いているというのがユニークであり、これが男性読者の心をも惹き付けた原因の一つではないかと思う。もしかしたら、それに加えて「はぐちゃん萌え」も人気要素の一つだろうか(お約束かな?)。天才芸術家だけど、人見知りが激しくて、繊細で、コンプレックスを持ってて、でも一旦うち解けると人なつっこくて、父性本能をくすぐる存在というか何というか。最初は単なるおちびの道化キャラかと思っていたがそれは大間違いで、実は結構奥深いストーリーがあるのだが、それは読んでのお楽しみということで。