多くの欧米人は日曜日に教会なんか行かないらしい

 「欧米人は宗教熱心だ」と思っている人は多い。「それに比べて日本人は宗教に無知で、信仰心が薄くて、クリスマスも初詣もやる無節操さで、嘆かわしい」などと続く。

 しかしはっきり言おう、これは日本人の思い込みである。欧米は、日本人が想像しているほど熱心なクリスチャンがそう多いわけでもないらしいと聞く。実際、若者の教会離れというものが進んでいて、日曜日は教会に行く日ではなく遊ぶ日になってしまっている家庭も結構多いという。

 ちょっと話は脱線して、皆さんはこのクイズに答える事ができるだろうか。

  1. アダムとイヴが禁断の木の実を食べるよう誘惑した動物は。
  2. ノアと家族が洪水から生き延びるために作ったものは。
  3. モーゼが紅海で行なった奇跡とは。
  4. ダビデと戦った巨人の名前は。
  5. エスの母親の名前は。

 答えは省略するが、「こんなの全部わかる、簡単過ぎる」と言う日本人も多いだろう。そうでなくとも、半分くらいは知っている人の方が多いだろう。日本人のキリスト教徒の割合は1%未満とは言っても、それは洗礼を受けた信者だけしか勘定していないからであって、キリスト教系幼稚園やミッションスクールに通う子供達は案外多く、そこで聖書とは何ぞや、を知った人も多い。そうでなくとも、「天地創造」「十戒」「パッション」のような聖書を題材にした映画や、「トンデラハウスの大冒険」のような聖書アニメによって、聖書の有名な物語くらいは知っている人も多い。実際に読んでるかどうかは別として、個人用の聖書を所有している日本人も結構いる。たとえ聖書の初歩的知識くらいは持っていても、信者にまではなりたいと思わない、これが平均的な日本人の姿ではないだろうか。

 となると、キリスト教の本場である欧米人には、もっと上の知識を期待したいところである。しかし驚いた。平均的日本人の聖書に関する知識とどっこいどっこいの欧米人が実は多いのではないか、私はそんな疑念を抱き始めている。私はアメリカ人と話す際、「一般的なクリスチャンならこれくらいの聖書の知識は常識的に知ってて当然だろう」と思っていた事が全く通じず、「ハァ?」という顔をされる、そんな経験を何度かした事がある。実は相手は無神論者だったなんて事もあった。この経験から、欧米人なら大抵は熱心なクリスチャンだと勝手に想定して話してはならない、ということを知った。そんな人は、全体のごく一部に過ぎないようだ。まあ、葬式と法事とお墓参りの時くらいしかお寺との付き合いがない日本人も多いなどと言われるが、それは欧米人も似たようなもので、赤ん坊の洗礼と結婚式と葬式の時しか教会に行かないという欧米人も多いらしい。欧米諸国のキリスト教徒の割合が80%だ90%だといっても、それは単に「教会に籍を入れている」人を勘定しただけで、だからと言って熱心に活動している信者とは限らない。「ほぼ毎週教会に通っている人」に限定したら、半数は優に割ってしまうだろう。一割を切ってしまった国もある程だ。そもそも、まだ信仰心も何もない赤ん坊に洗礼を施せば教会に籍を入れたことになるんだから、それで勘定すれば多くて当たり前と言えば当たり前だ。

 さて、我々が「欧米人は熱心なクリスチャンが多い」という印象を持ってしまっているのは、どうしてだろう。恐らく19世紀〜20世紀初頭の欧米を舞台にした小説や映画やアニメの影響ではないかと私は思う。しかし、「大草原の小さな家」や「赤毛のアン」や「アルプスの少女ハイジ」は、とっくに過ぎ去った昔を舞台にした話であるし、「トム・ソーヤーの冒険」や「アンクル・トムの小屋」はそれに加えて、アメリカ南部のバイブル・ベルトと呼ばれるキリスト教に熱心な一部の地域を舞台にした話である。「欧米人は大抵熱心なクリスチャンだ」というのは、馬車が走ってた時代の常識、「日本人はみんな着物を着ている」と同じくらい過去の常識であることを忘れてはならない。

#なお、私は本での知識+日本にいるアメリカ人やネットでのアメリカ人と話し合った体験だけを資料にしており、実際に欧米に行った事はないのでこれ以上詳しくはわかりません。実際に欧米在住経験のある方からの「確かにそうだ」「いや全然違う」等のご意見をお待ちしています。