「萌え」だけがアニメマニアではない

 時々思うが、私にはどうしても欠けている。漫画やアニメやゲームのいわゆる”美少女キャラクター”を「異性」として認識する能力が。

 それでは、「異性」じゃなければ何かというと、はっきり言って自分の人生と直接の関係がない「他人」なのだ。とは言っても、別にそういうキャラクターが100%嫌いという意味ではない。非常にえり好みが激しくて九割以上はマイ・フィルターにふるい落とされてしまうものの、ごく一部に「これなら大丈夫」というキャラクターもある。でも、「彼女にしたい」という感情がどうしても沸かない。私にとって、たとえば「デ・ジ・キャラット」は、はっきり言って「ハローキティ」や「マイメロ」なんかに似た可愛いキャラクター、という位置付けでしかない。アニメ作品のヒロインに恋するどころか、どこか第三者的な冷めた感じで鑑賞している自分に気付く事も時々ある。また、恋愛シミュレーションゲームの登場人物に個人的な思い入れを持てないから、そういうゲームにほとんど興味を持てないし、仮にやったところで長続きせず、すぐ飽きてしまう上に、主人公の名前すら忘れてしまう。

 まあ、「こんなモンでよく自分を“アニメおたく”だ“アキバ系”だと偉そうに自称できるものだ」と笑うがいい。しかし、私の周囲の漫画やアニメの愛好家を見回してみると、実は「萌え」だけがアニメマニアではないことによく気付かされる。
 昨今はアニメマニアというと「美少女系」作品ばかりが取り沙汰され、しかもそのキャラに恋心を持って鑑賞する男の意見ばかりが目立って採り上げられることがあまりにも多い。しかし実際にはアニメマニアの半分は「テニスの王子様」や「ガンダムSEEDデスティニー」のマニアに代表される女性マニアであるし、残る男性マニアも、「ガンダム攻殻機動隊のシリーズは大好きだが萌え系は嫌い」など、美少女系コンテンツが嫌いな人も意外と多い。漫画同人誌の世界でさえ、半分は女性作者や女性読者であることは昔も今も変わらないし、残る男性も、健全な同人誌を描いたり読んだりする人は実際には多い。だから、漫画やアニメやゲームのマニアだからと言って即、「美少女キャラに熱を上げる」だの「ロリコン」だのと勝手に決め付けるのは、大きな誤解であるし、「パソコンは大好きだがアニメにはてんで興味ない」というアキバ系も多いもので、本当はいろんな人がいるものである。

 だから、もし「アニメの世界に興味あるけど、美少女キャラおたくと一緒にされたくないから」という理由だけで、たったそれだけでアニメを敬遠しているなら、それは勿体ないことである。美少女キャラは最近のトレンドとは言え、それだけがアニメではない。「萌える美少女」ばかりを殊更に強調する昨今のアニメ論評やアキバ系文化考を疑ってみるのも時には大切だ。そして、幅広いカテゴリの中から、まずは自分が得意とする分野をつまみ食いしてみるが良い。加えて、同じ考えの仲間がいないかどうか、自分の身近で、あるいはインターネットで、まずは探してみよう。結構いるものだし、そういう楽しみ方ももっと社会に知られるべきだと私は思う。