薔薇を育てよう

 ここ*1は「はなごよみ」というタイトルの反面、園芸関連の話題がほとんどなくて、最近は特にアキバ系な話題ばかり、という何ともチグハグなサイトである。ところが私のリアルライフはむしろ逆であり、今では、アニメ鑑賞よりもガーデニングに費やす時間の方が断然多くなった。

 そして今年はとうとう薔薇に挑戦することにしたのだが、薔薇は何とも奥が深い世界である。園芸店に行って「薔薇の苗を一株ください」と言っても、せいぜい赤・白・黄色の色を選ぶだけで終わり、とはいかない。犬や猫の品種と同じくらい多種多様な品種があることにまずは驚かされる。カクテル、スパニッシュ・ビューティ、ピエール・ド・ロンサール、プリンセス・ミチコ(皆様ご存知の美智子様の御名前に由来)、ブラッシュ・ノワゼット……といった、何十何百もの横文字の品種があり、その中からどれを選ぶかからして大いに悩むことになる。しかも一株二、三千円はする決して安い買い物ではないから、余計に悩むものだ。

 逆に言うなら、選択肢が実に広いとも言える。花の大きさや色や形、枝の伸び方等、自分好みの品種が選べるのだ。アキバ系な言葉を借りるなら、まさに一ダースでは足りないほど豊富な薔薇の“萌え属性”といったところだ。花の大きさは大輪に中輪にミニバラ、咲く時期は一期咲きに返り咲きに四季咲き、品種も大きく分けて原種・オールドローズ・モダンローズに分けられ、その系統の中でも、たとえばモダンローズには、ハイブリッドティー(HTと略す)・フロリバンダ(FL)・イングリッシュローズ(ENG)をはじめいろいろ細かな系統がある。そしてその細かい系統の中に、何十何百もの品種があるといった具合で、もう目移りするほどの豊富さなのである(お嬢様学校を舞台にした某コバルト文庫やアニメが好きな人なら、「ロサ・キネンシス」「ロサ・ギガンティア」「ロサ・フェティダ」という名前は既におなじみだろうが、これも薔薇の品種である。ただし園芸店ではあまりお見かけしないようだ)。メルヘンチックな薔薇のアーチを作りたければ(つる)薔薇系の沢山の品種があるし、薔薇は好きだけどトゲはイヤイヤ〜ンな人は、トゲのほとんどない木香(もっこ)薔薇や、トゲが通常の薔薇より少なめの品種もある。

 そして、その品種の違いが少し分かってきた頃、途端に薔薇選びが面白くなってくる。地元の小さな園芸店のせいぜい十種類前後しか置かれていない薔薇ではなくて、数十ないし百数十種類の品種を取り揃えている、薔薇を中心に扱っている園芸店を巡ることになる。私の地元でいうなら「藤井陶磁器」(木更津市井尻)や「プランツ」(袖ケ浦市蔵波)といった店がある。それでも飽き足りないなら、「京成バラ園」(千葉県八千代市)のように、薔薇の苗を販売している薔薇園に行けば、文字通り何百ないし千何百もの品種から選ぶことができる。

 園芸店の店員さんの話によると、薔薇の好みには男女の違いがあるそうで、たとえば男性は大抵紅い薔薇が好きで、女性は他の色の薔薇が好きなことが多いのだとか。私の薔薇の“萌え属性”は何かって? やはり私も平均的男性の好みと同じで、紅い薔薇が好きである…が、もちろんピンクや白や黄色など他の色も好きだ。まるで少女漫画の世界から飛び出してきたようなピンクの八重咲きが華麗な「ピエール・ド・ロンサール」もちょっと気になるし、原種らしく素朴な雰囲気の黄色や白の花を付ける木香薔薇もお気に入りである。でも最終的に、私の好みである、紅い四季咲きの蔓薔薇でトゲが少なめという属性にぴったりの、アメリカ生れの「ダイナマイト」を選ぶことにした。名前に似合って結構大きく目立つ花を付けてくれる品種だそうで、今から楽しみである。

*1:この記事は「はなごよみ」が初出。