あゝ勘違ひ

 「月の法善寺横町」は「庖丁一本 晒にまいて」で始まるのでヤクザの歌だと小學生時代からずつと思ひ込んで居た。ヤクザと云へば刃物、そして腹に晒の布を卷くといふ聯想と、當時「庖丁一本 ヤッちやんに毆り込み」といふ替へ歌が小學生の間で流行つて居た所爲で、私はさう思ひ込んで居たやうだ。初めて終りまで聴いて、この歌が本當は板前の修行をする男の戀心を歌つた歌だと知つたのは、つい最近の事。