「お絵描き掲示板から“へたれ絵”を排除すべき」か

 一部のお絵描き掲示板では、初心者レベルの絵があまり歓迎されない傾向にある。悪く言えば“数分程度で適当に描いたように見える絵”、“幼稚園児や小学生が描いたようなレベルの絵”は、“へたれ絵”などと陰口をたたかれたり、「もっと上手になってから来てくださいね」なんて言われることもある。もちろん、それは必ずしも、絵があまり得意でない人に意地悪したくてということではない。場をかき乱すために殴り描きの絵ばかりを連続投稿するような荒らしなら、確かに排除されて然るべきだろう。

 しかし、こういう初心者レベルの絵は、そんな荒らしばかりが全てではない。私が観察する限り、大抵は「お絵描き掲示板での絵の描き方に慣れていない」だけ、というケースばかりである。まず、「弘法筆を選ばず」はお絵描き掲示板には通用しない。大抵はタブレットなんて持ってないだろうし、鉛筆やペンや絵筆なら上手に描けるはずの絵であっても、マウスではどうしてもうまく描けないものである。それに加えて、個々人の絵の上手下手もあり、絵を描く事自体は好きでも、アマチュア漫画家レベルには到底及ばないという人は私も含めて多いだろう。また驚く事には、本物の小学生が描いているというケースが実際にある(小学生といっても侮れないもので、普段「りぼん」や「なかよし」の漫画を模写したり、自分でも漫画を描いたりしてるような女の子は、本当に楽しく、まるで鼻歌を歌うかのようにすらすらと描くのだ。そんな姿が、昔も今も私の憧れるところである)。

 このように、いろいろなケースがあるので、十把一絡げにはできない。大体、絵の初心者であることは、それ単独では迷惑とは言わない。むしろ問題なのは、お絵描き掲示板を「自分専用の練習用スケッチブック」とか「無料絵画教室」と勘違いするかのような態度であり、これはお絵描き掲示板初心者の陥りやすいワナである。そこらへん気を付けながら、自分の現在持つ技術レベルの範囲で、心を込めて描けばよい。そうすれば、そして周囲の環境にも恵まれれば、たとえ絵はそれほど上手でなくとも、皆に愛され仲良くやっていけるものだ。

 それに、人間は成長するものである。今は絵がそれほど上手でない人にとって、お絵描き掲示板とは、他人の絵を観察したりアドバイスを受けたりしながら絵の描き方を自ら学ぶ場ともなり得る。当初は細い黒線にべた塗りしか出来なかった人が、レイヤーや水彩ブラシの使い方を覚え、背景を描くコツや陰の付け方を覚えるうちに、技術が段々レベルアップしてくるものである。

 さて、我がサイトにもお絵描き掲示板があるが、月に数件から十数件はスパム投稿や荒らし投稿のあるテキスト掲示板よりはまだ平和的なので助かっている。私自身絵がそれほど上手でないから、上級者も初心者も等しく歓迎する方針できたけど、一見さんはともかく他の常連さんは「もっと上手になってから来てくださいね」なんて意地悪な事を言うことなく、初心者に暖かい人ばかりなのが何とも嬉しい。そしてその“まったりとした”環境の中で、初心者も少しずつレベルアップし始めている。中・上級者ばかりが上手な絵を見せ合うお絵描き掲示板も良いが、こういうお絵描き掲示板もあって良い。いや、私の設置した掲示板を、こういう良い雰囲気に作り上げてくれてありがとう、とみんなに感謝したい。

 最後にムダ知識。うち*1のお絵描き掲示板は「大学ノートの裏表紙」という名前だが、常連さんたちの平均年齢は若そうだから、この名前の由来がわかる人は恐らく少ないだろう。これは1970年代に「古井戸」の歌った「さなえちゃん」という歌の出だしから取っている。大学ノートの裏表紙にさなえちゃんを描いたけど、鉛筆で描いたからいつのまにか消えてもう会えない、という内容の歌(なお2番以降はアドリブで、好きなクラスメートや先生などの名前を入れて歌うのも楽しくて良い)。そんなノートの片隅の落書きのように、とにかく楽しく描いて欲しい。

*1:はなごよみ のこと