さらばセントラルプラザ

 千葉県千葉市の「セントラルプラザ」というデパートが10月いっぱいで閉店したそうだ。私は千葉市にいくたびによく行っていた思い出深い場所なので、非常にさみしいものだ。


 とは言っても、そこに初めて行ったのは六、七年前のことである。当時は千葉パルコ、ショッカー(十字屋系列のディスカウントショップ)と並んで比較的人が入っていたように思う。エスカレータや色々な設備は手書き看板が懐かしい、昭和四十年代頃(臆測)の匂いのする、当時でさえ古めかしいものだった。リフォームせずよく(良く言えば大事に)使い続けてると思ったものだが、実際には、トレンディドラマのロケ(題名は失念)にも、その当時なお使われたほどであった。一階のショーウィンドウが出会いのシーンに効果的に使われていたのを思い出す。


 上の方の階にあった「多田屋」という本屋は、千葉市内でも大きな書店だったのでよく利用していたし、時々古本市が開催されて、何度も買いに行ったことがある。SPレコード浪花節とクラシックや洋楽が多かった)を何千枚も無造作に置いていた、四階の骨董品店にはお世話になったし、そしてその階にあった甘味処であんみつを食べたことも思い出深い。


 しかし、このデパートもバブル崩壊による不景気と、千葉そごうが駅裏に移転したことによる人の流れの変化と、年の波にはとうとう勝てなかったのだろう、去年末だか今年初め頃、本屋や骨董品店を含め、上の階が閉鎖になってしまった。前々から閉鎖、閉鎖とは言っていたものの、ずるずる延期になっていたが、とうとうその日は来たのだ。お目当ての店がなくなって遠ざかってしまった今頃、とうとう閉鎖したとのニュースを聞いてビックリした。今日のことだった。


 思えば我が地元木更津も、バブルがはじけて以来、駅前でさえ少しづつ活気が失われていった。
 十字屋デパートが「ショッカー」になり、「土屋家具」になった後閉店。
 西友は若者向けデパート「EPO」になったが、ほどなくして閉店。
 昔、屋上の丸い展望台のレストランに憧れていた(機械仕掛けでおじぎしながら挨拶する仏蘭西人形「ダリヤちゃん」が一階にあったのも懐かしい)デパート「サカモト」が「サカモトそごう」になり、バブル期の駅前再開発で「木更津そごう」として駅前に移転したが、結局は皆さんご存じのように閉店(幸い、「ダイソー」等、そごう以外のテナントは一部残っている)。
 ダイエーもファーストフードを一階に入れたり営業階を減らしたりと生き残り策を巡らしたものの、結局閉店。
 このように、駅前に四つあったデパートが全滅である。都会ほど駅の利用者が多くない木更津では、地元民の利用がデパートや駅前商店街を支えていた。それでも昔は歩きや自転車が多かったので問題はなかったが、モータリゼーション(←昭和四十年代頃の言葉だと思うが)はむしろ皮肉なことに、そごうがサカモトだった昭和五十年代の方が強く意識されていた。当時は車を隣のタワーパーキングに停めれば楽にショッピングできたのを思い出すが、バブルがはじけてから、新しくできたそごうの立体駐車場もなくなり、結局駐車場不足で行くのも面倒臭いといった状況である。これでは、駅前商店街には車で来るなと言っているようなものである。無料で楽に停められるジャスコや忠実屋(後のD-MART…ここも閉店)に客が流れてしまったことは、想像に難くない。
 いづれにせよ、デパートを取り巻く環境はこの四半世紀でだいぶ変わってしまったものだ。


 さらばセントラルプラザ。さらばデパート全盛期の証よ。